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価値観を揺さぶる読書

「外側の世界」をどうみるのかはひとそれぞれで、そう簡単には変えられないものです。その「内側の自分」を変えてくれるのが読書だと思っています。自分の傲慢さを恥じるとともに、自分の悩みなどちっぽけにみえてきます。価値観を揺さぶる読書を楽しみましょう。

“人は独り生きていくのが基本なのだと思う”

『おらおらでひとりいぐも』若竹千佐子(著)

1954年岩手県生まれ。本作品は63歳にしてデビュー作。文藝賞、芥川賞を受賞する。この年齢まで才能を眠らせ開花させた彼女の精神は見事としか言いようがない。積雪の中、長い冬に耐えて今まさにツボミを開花させる野の花のようにたくましく美しい。東北の女だな、と感じる。

オラオラ詐欺の話?いや、オラオラ詐欺などない。それを言うならオレオレ詐欺だ。『おらおらでひとりいぐも』は宮沢賢治の『永訣の朝』からなる一節。

本書は、晩年に考えてみた桃子さんの人生哲学の話。考えざるを得ないのかもしれない。何せ、桃子さんにはお迎えが来るまで、時間はたっぷりあるのだから。

桃子さんは独り暮らしの平凡な主婦・老女だ。夫に先立たれ、疎遠な息子と娘がいる。家にやってくるネズミと戦いながら、使い勝手がよく配置された部屋に座り、お茶をすする。混沌の中の秩序。

頭の中にいる幾人もの桃子さんと向き合って暮らす。記憶の切れ切れな様子は、鮮明だったり朧気だったりする。過去から未来への引力に束ねられたジャズセッションのような響きに感じられて心地よい。

夫・周造の亡き今、孤独とどう付き合うか。飼いならし自在に操れるはずの孤独が暴れる。老いとは、若さとは。このしぶとい生の恐怖を感じてほしい。そして、この耐え抜いた先の、夫が亡くなったという自由や解放感を知ってほしい。この感情が見事に描かれている。女の芯の強さに闇などない。

本書のポイントは東北弁だ。桃子さんの心に直結するための道具として欠かせない東北弁をより身近に感じて欲しい。以下を参考に、読み深められたら幸いだ。

やんだぐね→嫌になった

いづい→居心地が悪い

おしょす→恥ずかしい

なじょにすべが→どうしようかなぁ

んだ→そうだ、めんこい→かわいい

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