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命の危険を感じる本

最近、ベッドライトに照らされている本は宇宙に関する写真集です。寝ながら仰向けになって持ち上げて読むと、あまりの重さに手がプルプル震えて、本が顔面直撃しそうで命の危険を感じる巨大本です。近いうちにご紹介します。今回は2019年1月13日の朝読書会にご紹介いただいた阿佐田哲也さんの別の名義の本をご紹介します。

“それじゃ、な”

『うらおもて人生録』色川武大(著)

著者の経歴が凄い。1929年東京都新宿区生まれ。東京私立三中に入るが、集団になじめず、中退。戦後の数年間を放浪と無頼、アウトロー生活を続ける。映画と演劇三昧の日々を続け、雑誌編集の仕事をきっかけに作家の道を歩み始める。麻雀の世界では伝説の打ち手だったらしい。阿佐田哲也の名義で数多くの麻雀小説を手掛ける。『離婚』で直木賞をとる。

人徳と言うべきか。普通ならば裏社会で一生を終えるはずの人。周囲に好かれ、愛され、表舞台へと駆り出される。精悍なムードを漂わせて天性の魅力を振りまく彼は、誰からも愛されるキャラクターだったらしい。しかし、どこか、儚げでもあるのは気のせいだろうか。

本書は天才劣等生・色川武大が、悩める学生たちに向けた、劣等生がよりよく生きる指南書である。劣等生が陥りがちな悩みを細かに章立てて、どこからでも読みやすく構成されている。酒に競馬、麻雀など、どれも未成年には御法度の内容だが、そこからたとえが始まり、正しく生きよう、と説いているのが面白い。

“先をとること”の章では、今の自分の立場と重ね合わせて読んだ。先をとって損ばかりしていることに悲しく思う反面、そんな性分に諦めも混じる。そんな劣等生は時には魅力的に見えるらしいと著者は慰めてくれる。

著者の不器用さも満載なのだが、そこもまた魅力と言える。上から目線は一切ない。ただひたすら大丈夫、と我々の前に立ちはだかり、その大きな背中を見せてくれる。できるだけ後戻りはせずに、月並みだけれど、一歩づつ確実に前へ進みたい。そんな著者からのメッセージにどこか沁みる。誰しも幸福になれるであろう人生とは裏腹な現実を突きつけられた時、彼の言葉は、どこか、心に沁みるのだ。

終盤は持病であるナルコレプシーの話やだらしなく生きる自分のこと、父親との確執など、これでもかと突きつける。

これが教育書なのだろうか。そう、これこそが生きる教育書なのだ。

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