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2020.5.9 手紙 Yuning

先日、大学時代の古い友人から手紙をもらった。私のまわりには、「必要性を感じないから」という理由で携帯電話をいまだかつて持ったことがない風変わりな友達が何人かいるが、手紙の彼もそのうちの一人だった。いつぶりになるかわからない手紙には、新しい仕事のために転居したという近況がつづられていた。


私たちは海外の大学で学んだ留学仲間である。専攻は違ったが、理系だった私が気晴らしに取った文学のクラスで一緒になったことがある。好きな英詩を一つ選んで、それについて掘り下げなさいという課題が出たことがあった。私はエドウィン・アーリントン・ロビンソンの「Richard Cory」を、彼はロバート・リー・フロストの「Stopping by Woods on a Snowy Evening」を選んだ。


「Richard Cory」はサイモン&ガーファンクルの歌になったことで知られていたし、フロストの詩もまたアメリカでは誰もが暗誦できるほど有名なものだった。ご存知の方も多いと思うので、最終段だけここに引く。


The woods are lovely, dark and deep,

But I have promises to keep,

And miles to go before I sleep,

And miles to go before I sleep.


最後に繰り返される「And miles to go before I sleep」は、家に着くまでにまだ長い道のりを行かねばならないという直接の意味と、暗い冬の森が暗示する「安らぎとしての死」に魅せられつつも、人生を終えるまでにまだやらねばならないことがあるという二つの意味を重ねている。


この課題は、クラスメイトの前でスピーチするという形で発表された。私たち留学生にはハードルの高い課題だったが、ともかくやるしかない。口数が少なく、その痩躯にどこか孤高さをたたえた友人の佇まいは、このフロストの力強い詩によく似合っていたと記憶する。


手紙をもらった数日後、私は新しい便箋を買いに行き、近況を知らせてくれた感謝をしたためて返信を出した。あなたが教えてくれたフロストの詩は今でも覚えています、と書き添えて。

それではまた次回、Yuningでした。

【投稿者】Yuning

明日は朝の横浜読書会のOKAさんへバトンタッチ!

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