2020.5.4 手紙 KURI
携帯電話が普及していない時代。気持ちを伝える通信手段はもっぱら“手紙”でした。
『怖い絵』で有名な中野京子さんの学生時代の話です。中野さんはその当時、よくモテた友人の「ラブレター採点係り」だったそうです。彼女はラブレターをもらうと、中野さんにそっと差出し「彼はどのような人なのかしら?」と聞いてきます。中野さんは「この人は文章が下手で教養を感じない」とか「内容が稚拙だ」などと自分の感想を率直に述べていたそうですが、ある時ひときわ異彩を放つ詩を書いてきた男性がいたそうで、「彼は天才だから、一度会った方がよい」と勧めたのだとか。
この話のオチは、その手紙の詩は彼のオリジナルではなくランボーの詩だったということです。
そして、この天才詩人は、40年前のコマーシャルのナレーションにも登場したことがあります。ご存知の方はいるでしょうか?
その詩人は底知れぬ渇きを抱えて放浪を繰り返した
限りない無邪気さから生まれた詩
世界中の詩人達が青ざめたその頃
彼は砂漠の商人
詩なんかよりうまい酒を などとおっしゃる
永遠の詩人ランボー
あんな男 ちょっといない
ランボーが詩を書くようになったころ、1870年の普仏戦争の動乱によりかなり長いあいだ学校が閉鎖されます。時代に翻弄され、自由なる自由を得た神童の波乱なる人生の始まりです。そんな観念の地獄を、現実の地獄を見た男から、英気を養うのも悪くないと思います。今は忍耐心と節度が必要な時期だと思いますが前を向いて乗り切りましょう。
ちなみに、このランボーはシルヴェスター・スタローンともエイドリアンとも関係のない、19世紀のフランスの詩人アルチュール・ランボーです。
今なお、世界中から彼の墓に手紙が届くそうです。やはり、ちょっといない男です。
【投稿者】KURI
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