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これまでの読書会

第7回(10/18)ノンフィクション横浜読書会

今年は季節外れの台風で深刻な被害を受けられた方も多いと思います。皆さんや皆さんの周囲の方々は無事でしたでしょうか。そして被災に遭われた方が早く普段の生活を取り戻せることをお祈りいたします。

こんばんは。第7回 ノンフィクションの夜(ノンフィクション横浜読書会)へようこそ。FUJIです。

この読書会は毎月1回、金曜日の18:30から関内駅周辺のアーキシップライブラリー&カフェで開催しています。

1日の仕事、授業が終わってちょっと疲れた身体を休めながら、ノンフィクション本を持ち寄ってユルく語り合う集まりです。

今回、10月18日は男性7名、女性2名、合計9名が参加くださいました。では持ち寄られた本をご紹介しましょう。

■米中貿易戦争 アメリカの真の狙いは日本 著者:増田 悦佐

世界経済のみならず、世界政治の中でも発言力を増す中国。それに危機感を覚えた米国のトランプ大統領が打ちだした対策が中国からの輸入品に高い関税をかけること。しかし、アメリカ経済はこれまで必ずしも中国と対立してきたわけではなく、その真の狙いはどこにあるのか?ノンフィクション限定読書会において、経済関係の本を紹介されたことはあまりなかったと思います。これからも増えてくると面白いと感じます。

■虹色のチョーク 著者:小松成美

粉の出ないチョークを製造し業界シェアナンバー1の「日本理化学工業」。しかし、その工場の従業員の7割は知的障がい者。彼らは文字が読めなかったり、時計が読めなかったりするが、生産ラインにはそれを補う工夫、仕組みが施されて品質の高い製品を生み出している。しかし、昭和12年に創業されたこの会社は最初から障がい者を雇用していたわけではなかった。幸せを感じて生きるとはどういう問題を探り、障がい者雇用と会社経営の両立について書かれた本。

■ヤンキーと地元 著者:打越 正行

「エスノグラフィー」という言葉を初めて知りました。社会や集団の行動をフィールドワークをして観察、記録することだそうです。善悪の評価をしたりするのではなく、そこから一定の普遍的な様式などを見出すことが目的になるようです。日本において所得が一番低いと言われている沖縄県。観光地としての沖縄ではなく、生まれ育つ日常の場所としての沖縄はまた別の顔を持ちます。沖縄に生まれ育ってきた地元の集団(暴走族やヤンキー)に入っていき、彼らと10年以上一緒に行動することで彼らの実態を描き出しています。

■農で輝く! ホームレスや引きこもりが人生を取り戻す奇跡の農園 著者:小島 希世子

著者は地元から東京に出てきた時に、ホームレスの人々が路上にいて、通りがかりの人々がその人たちを無視して、一切声をかけようとしないという状況をみてとてもショックを受けたそうです。そして、ホームレスやニート、ひきこもりと呼ばれる人々に声をかけた。たとえばホームレスの人々は必ずしも働きたくないわけではない、働きたいが働き口が見つからないのだという。そこで、そういう人々を雇用する農園の経営を始めたという記録。

■冷血 著者:トルーマン・カポーティ

カンザス州の田舎の農場でおきた一家惨殺事件。警察の懸命な捜査も虚しく、事件は迷宮入りに思われたが、やがて二人の男が犯人として特定される。そして、裁判、死刑判決。その経緯を詳細に取材し、犯人とも交流をしたカポーティのノンフィクション・ノベルの傑作。ご紹介いただいた参加者の方は、カポーティは加害者である犯人の視点にたって描いている部分が多かったと感じたそうです。また、カポーティの他の著作も読んでおられて、「ティファニーで朝食を」なども好きで、そのつながりで読んでみたら、全然違ってびっくりされたそうです。

■8050問題の深層: 「限界家族」をどう救うか  著者:川北稔

「8050問題」というものをごぞんじですか?私は初めて知りました。長期高年齢ひきこもり、つまり80歳代の親と、その親にそだてられた子ども、50歳代のひきこもりを抱える家族のことを指すそうです。ひきこもりのまま中年となった人たちは当然のことながら社会的な交流や生活力がなく、80歳代の親が突然死したとしても、それを誰にどう伝えていいかわからない、その結果として放置=死体遺棄という罪に問われてしまうこともあるという。かといって何か有効な解決手段があるというわけではありません。昔は大家族で誰かがそこを補っていけたのかもしれませんが、老老介護などの問題と並んで、この8050問題も核家族化が進んだ現代特有の問題なのかもしれません。

■天皇のお言葉 明治・大正・昭和・平成 著者:辻田 真佐憲

天皇の発言は各時代で色々と残っています。かつて国民に対しての公式な天皇の発言は「勅語」と呼ばれていました。現代では「お言葉」とよばれています。明治以降の各時代の天皇とその発言から見る、天皇の人格、及び時代の世相を買いています。やはり分量的に多いのは帝国日本と、象徴天皇となった戦後日本を生きた昭和天皇の発言。二つの時代で大きく変わる発言のニュアンスの違い。もう一つ重きを置かれているのが平成天皇(現上皇)。生まれながらの象徴天皇として、天皇制の意味と自らの責任を突き詰めて発言していたというのが読み取れます。

■定本 和田誠 時間旅行 著者:和田誠

読書会の前週に83歳で亡くなられたイラストレーター:和田誠さん。本の表紙絵やポスター、アニメーションなどでも数多くの作品を制作され、絵は常にシンプルでクール、そしてユーモラス。おそらく日本でこの人の描いたイラストを見たことがないという人はいないでしょう。この本は和田誠さんが幼少の頃に描いた絵から、82歳の時の作品まで幅広く収録しています。

■ダークツーリズム 悲しみの記憶を巡る旅 著者:井出明

決して有名な観光地ではなくても、どの土地にもその裏の歴史、悲しい閉ざされた歴史がある。ダークツーリズムはそういう闇の歴史を追いかける旅。日本のダークツーリズムポイントを紹介しているそうです。場所の一つに西表島が紹介されているという話がありました。かつては炭鉱があり、その炭鉱の中でだけ通用する貨幣があり、、、という話が紹介されると、別の有名な漫画と同じ設定ということで盛り上がりました。

■宮本常一と渋沢敬三 旅する巨人 著者:佐野眞一

柳田國男と並ぶ民俗学者となった宮本常一。そして彼の活動を支援しつつ、渋沢栄一の孫として日銀総裁、大蔵大臣にまでなった渋沢敬三。この全く違う境遇の二人の間にあった強い絆とフィールドワークを中心とした宮本常一の民俗学における業績を紹介した作品。結果的に今回の読書会はヤンキー、ひきこもり、ホームレスといった今の日本の社会問題として語られることの多い立場の人たちに焦点を当てた作品が集まった気がします。日本ではいま「自己責任論」を唱える人も多いですが、いざ自分自身や社会状況を見た時、10年後にホームレスになっていないとは言い切れない気がしてなりません。

さて、2019年4月から始まり、半年を経た「ノンフィクション横浜読書会」。次回、第8回は初めてテーマを設定してみることになりました。第8回のテーマは「生物・自然・科学」です。生き物の生態や自然に関する研究、ミニマムな科学の世界まで幅広く捉えていただいて問題ありません。あなたが思う「生物・自然・科学」のノンフィクション本をお持ちください。

それでは次の夜にあなたと、本にお会いできることを楽しみにしています。

【投稿者】FUJI

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