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これまでの読書会

第13回SF横浜読書会KURIBOOKS『透明性』

■2024年3月20日(水) 20:00-22:00 オンライン開催

■参加者8名(男性3名、女性5名)でした。

課題の本はマルク・デュガン(著)『透明性』です。

IT企業の社長界隈では必読書となっているとの噂の本です。

今回は『透明性』をたくさんの方に読んでもらいたいと思い、未読の方に向けて書いています。

以下、読書会内の感想も交えながら、『透明性』の魅力をお伝えしたいと思います。
 
◆『透明性』とはどんな内容のSF小説ですか?

2068年の近未来を舞台に「人間を不死化する技術」を一企業・トランスパランス社(透明性)が握ったらどうなるのか、という話です。

物語では希望者全員が不死になれる訳ではなく、その企業独自のアルゴリズム判定によって、不死化技術の恩恵を受けることができる人とそうでない人に分けられてしまいます。

そのアルゴリズム判定は、もちろん富や名声などの判断基準ではなく「死後も生きるに値する人間であるかどうか」です。

個人情報をすべて企業に明け渡し、その企業のデータ分析によって不死身の人間になれるか、が決まるのです。

すなわち「人造の神」の誕生と言えます。

◆『透明性』はミステリ小説や文学作品にも思えてくる不思議な小説です。

物語は「人間を不死化する技術」を持つ企業・トランスパランス社(透明性の女社長・カッサンドルが、殺人の容疑にかけられるところから動き出しますので、始まりはミステリ小説のような展開です。

また、カッサンドルと夫や息子との関係を描いたシーンはフランス人らしい静謐な文学作品として楽しめるかと思います。

◆実は、『透明性』の主軸は社会風刺小説なのです。

実は『透明性』は、未来への警告を綴った社会風刺を主軸として書かれています。

本文では、Googleやトランプなどが実名で登場して、程よく刃を向けた発言をしています。

SF小説、ミステリ小説、文学小説、社会風刺小説といった、様々な角度から読める『透明性』は、唯一無二の作品と言えます。

◆『透明性』は面白いですか?

評価がわかれる本です。

読書会に参加した方たちは 全員「読んでよかった」と話していました。

◆では、なぜ評価が分かれると思いますか?面白くなかったと思う人の意見はどの点でしょうか?

生粋のSF小説ファンは、「科学的な裏付けのない設定」に物足りなさを感じると思います。

本書に科学的裏付けが必要ない理由は「大きな落ち」があるからです。(ちなみに小さな落ちそのものに科学的裏づけがないです)

その大きな落ちは、夢落ちに近いストーリー展開になっており、そこに違和感をいだく方も少なくないと思います。

◆その他、読書会内であがった『透明性』の感想

・アンチGoogleなところはフランスという国民性が出ていると思う。

・割と近い未来の話なので、現代と地続きのような感覚で読んだ。

・不死の状態は食欲・睡眠欲はない設定だが、性欲はあるのはなぜか?(3大欲求の性欲だけあるのはなぜか?)

・現代のシンギュラリティ(人工知能が人類の知能を超える)論争に近いテーマが孕んでいる作品だと感じた。

(冬木さんからはシンギュラリティの権威レイ・カーツワイル博士の2029年問題を詳しく解説していただきました。)

・特に結婚観などはフランス人ならではの視点で描いており読み応えがある。

・Googleやトランプなど、実名でよく出版できたなぁと思う。

また読書会内では、企業に個人情報を明け渡すことへの抵抗感や、不老不死に対する考えかた(自然に死を迎えるのか、不死を望むか)について個人の考えを深堀しました。

以上、ご参加いただいた皆様ありがとうございました。楽しかったです。

冬木さんの解説なしでは、ここまで『透明性』の魅力を知ることができませんでした。冬木さん、ありがとうございます!

皆様の参加をお待ちしております。

【投稿者】KURI

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