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第73回(9/28)横浜読書会「嫌な感じにさせる本」

■参加者16名(男性6名、女性10名)初参加者は2名でした。

今回のテーマは「嫌な感じ」にさせる本でした。一冊の本から浮かび上がる負のオンパレードに参加者全員が危険な世界へと導かれました。「嫌な感じ」の受け止め方はひとそれぞれです。作品から受ける様々な種類の「嫌な感じ」を読者のフィルターを通して味わい尽くした会となりました。

【ご紹介いただいた本】

【タイトルが嫌な感じ】

・『いやな感じ』高見順(著)

ストライクなタイトル。1930年、とある暗殺計画に挫折したアナーキストが回想する波乱の人生物語。

・『鳥肌が』穂村弘(著)

良くも悪くも人よりずれた感覚の歌人が思う鳥肌が立つエピソードがつまった一冊。装丁もオシャレ。

・『もうすぐ絶滅するという煙草について』芥川龍之介、他(著)

愛煙家になりたての人間としては聞き捨てならないタイトルだと思う。文豪が愛した煙草はもはや「悪」の域なのか。

 

【著者も作品も嫌な感じ】

・『人もいない春』西村賢太(著)

そもそも著者自体が嫌な感じを漂わせる。破滅型人生のテンションで突っ走る作品に期待外れはない。

 

【期待外れでがっかりした一冊】

・『これでいいのか川崎市』岡島慎二(著)

住み慣れた生活の地がディスられてばかり。それでよいのかと手に取った一冊だが本書にも街の残念な内容が多く書かれていてがっかりした本。

 

【嫌な感じを超えた名作】

・『ハツカネズミと人間』スタイン・ベック(著)

世界大恐慌時のアメリカが舞台。親友と夢を描いた先にある悲劇の物語。嫌な感じと共に爽やかさも味わえる稀有な作品。

・『贖罪』イアン・マキューアン(著)

少女の犯した罪は重い。物語を改稿することで赦されるのか。衝撃のラストは世紀の大傑作と言われる所以。

・『舞姫』森鴎外(著)

エリート男性の残念な生き様が高校の教科書で読み継がれているのは多少の謎が残るが名作であることには間違いない。古い文体も時代を感じる。

 

【嫌な感じのホラー小説】

・『シャイニング』スティーブン・キング(著)

どちらも傑作には変わりないが原作と違いすぎる映画との違和感。トランス一家の闇は深く、凍る恐怖感が読者に迫る。

・『黒い家』貴志祐介(著)

保険金をめぐる物語。グロテスクな描写に容赦ない本書から真の恐怖体験を味わう。

・『百物語』平谷美樹(著)

オチがないショートストーリー。身近なホラーで百の物語が迫る。

 

【地味に嫌な感じ】

・『本で床は抜けるのか』西牟田靖(著)

本に囲まれて生活することに憧れる身としては、本で床が抜けるなどという著者のお悩みが限りなく嫌みに聞こえる話。

 

【つかみどころのない嫌な感じ】

・『不幸な子供』エドワード・ゴーリー(著)

アンニュイな世界観と筆致の細やかさが素晴らしい。不幸な子供の小さな物語。

・『花紋』山崎豊子(著)

閨秀歌人のいばらの生涯を描く。狭い世界から人の闇を覗く。

 

【嫌な感じと言うより最悪】

・『彼女は頭が悪いから』姫野カオルコ(著)

東大生が起こした赦されることのない事件を限りなくノンフィクションに近づけた話題の小説。

 

【嫌な感じと言うより虚無感】

・『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ(著)

クローン技術により生み出された臓器を提供するためだけの存在。そこに「心」は存在すべきなのか。

 

【嫌な感じと言うより犯罪です】

・『プロテスタンティズム』深井智明(著)

読後大満足の一冊であったが、後、著者の文献捏造疑惑が起こるという悲劇。本書に嘘偽りがないことを願うが、現在販売中止となっている。

 

嫌な感じの作品に作家の「悪意」は存在するのでしょうか。何かに囚われて心の自由を奪われた閉塞感から自己の開放を望んでいるような、何かと戦っているような、そんな印象を受けました。

 

ご参加いただいたみなさまありがとうございました。楽しかったですね。

参加をお待ちしております。

 

【投稿者】kuri

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