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第34回考える読書会 『源氏物語』第7回(柏木~雲隠)

■『源氏物語』を読み進めていく企画の第7回目(全10回)。第2部終了です。

参加者20名(男性7名、女性13名)。今回から参加の方が3名もいらっしゃいました!

 

訳者は決めずにお好きなものを読んできていただいており、今回の訳者さんの内訳は以下の通りです。

 

角田光代訳  5名

林望訳    5名

瀬戸内寂聴訳 4名

田辺聖子訳  2名

大塚ひかり訳 1名

橋本治訳   1名

原文     1名

 

■まずは、桐壺~雲隠までの巻を読んで、印象に残った人物(男女それぞれ)を挙げていただきました。

 

★印象に残った男性

・光源氏   5名

・夕霧    3名

・明石の入道 3名

・柏木    2名

・桐壺帝、朱雀帝、大夫の監 各1名

 

★印象に残った女性

・紫の上   7名

・六条御息所 3名

・雲居の雁  2名

・玉鬘、明石の君、女三宮、弘徽殿女御、花散里 各1名

 

★印象に残ったペア

・夕霧&雲居の雁   1名

・朱雀帝&朧月夜   1名

・光源氏&惟光    1名

・光源氏&六条御息所 1名

 

『源氏物語』のヒーロー・ヒロインの光源氏と紫の上がトップでした。ただし、印象に残った理由としては、光源氏は「すべてを手に入れても満たされていない」「することはすごいが最後まで何も達成できなかった」など栄華を極めながら幸せではない主人公として印象に残ったようです。紫の上についても、「センスがありクレバーな女性」という理由を挙げる方がいる一方で、「いろんなことができる人なのに思うような人生を送れなかった」「光源氏と相思相愛なのに幸せでない」「女性の生の不自由さ・切なさを嘆いている」など最高の男性に愛された女性なのに心満たされず哀しみを深めるところが、皆さんの心に残ったようです。

 

夕霧は、「雲居の雁との少女の巻での純愛を貫き通した」「出家したいなど世をはかなむことなく、現実をしっかり生きている」などの理由で印象に残った人物として挙げられていました。「雲居の雁を裏切り傷つけ、落葉の宮にも態度をはっきりさせないところが嫌い」というご意見もありました。人によって、好き嫌いの登場人物が違い、それぞれのご意見を聞くことができるのも読書会の面白いところです。

 

明石の入道・明石の君は「不幸せになっていく人が多い中で数少ない成功者」として印象に残った人物として挙がりました。第3回の好きな登場人物の男性で1位となった明石の入道。今回も印象に残った人物として挙げられ、脇役ながらその個性と生きざまがインパクトを与えているようです。

 

多くの人物が登場する源氏物語だけあり、印象に残った人物も人によって様々でした。

 

■次に今回の範囲(柏木~雲隠の巻)を読んでの感想をお聞きしました。

 

・とても奥深い内容で、1000年読み継がれているのも分かる

・すごくリアルな内容

・現代にも通じるものがあり、すっと読めた

・柏木や夕霧など評判の良い男が豹変する

・光源氏・紫の上の歌のやり取りと一条天皇・中宮定子の歌のやり取りと重なるものがある

・光源氏や紫の上などの老年の話で、身につまされるものがある

・幻の巻が非常に印象に残った。大切な人を失うと一年が早く過ぎるのが、非常によく描かれている

・貴公子に愛されたら幸せになるのが常道なのに、光源氏は誰一人女性を幸せにせず、自分も満足せずに終わった

・女三宮と朱雀帝の物語のかかわり方が面白かった

・光源氏は調子よすぎで、それを許す世の中が甘すぎ

・光が消え、リアルな世界になった

・源氏物語はキラキラしている印象だったが、死・別れ・老いの話になり今も昔も変わらない

など

 

■その後、事前にお配りしておいた資料に基づいて、今回の範囲の中心人物である女三宮・女二宮などの皇女の結婚に関連して、「皇女」について簡単に解説しました。平安時代の実際の皇女たちの大半は独身であったのに対し、源氏物語の皇女たちは結婚している者が多いことを資料で確認しました。光源氏は藤壺・秋好中宮・末摘花・朝顔の君など皇女に盛んにアタックしていることがわかり、「高位の女性を求めたのは政治的な行動でもあったのか」「光源氏の征服欲」などの様々なご感想・ご意見が出ました。また、柏木が女三宮を求めたのも、恋愛だけではなく、父・頭中将が皇女をもらったことから、左大臣家長男として再興を目指し皇女がほしかったのだろうというご意見も出ました。

 

■次に、各巻の読み取りポイントなどを資料で触れながら、その都度、ご意見・ご感想を出していただく形で進めていきました。特に、夕霧、幻の巻で話が盛り上がりました。主な感想を以下の通りです。

 

★柏木の巻

柏木の死について様々な感想・ご意見が出て、平安時代の政治がらみの毒殺もあったのではという話にまで及びました。

 

★夕霧の巻

・女二宮を無理やり連れて帰るのが強引すぎる

・女二宮がかわいそう、落葉の宮という呼び方もひどすぎる

・女二宮は奥さんモードになっているような描写もある

・女二宮の母が憤死するのが驚きだが、それぐらい皇女の母として娘を守ろうとしたか

・夕霧のやり方は下手、うまくない、もっと強引でいい

・夕霧は光源氏の息子だがヒーローにはなれない

・夕霧の巻の終わり方が解決しないで終わっている

・雲居の雁と夕霧の夫婦喧嘩がいまにも通じる

 

★幻の巻

・今まで相聞歌で歌のやり取りが多かったが、今回は光源氏の独詠歌が多く、光源氏の悲しみが伝わる

・光源氏が今までの手紙を捨て、紫の上との手紙を焼き捨てるところが印象的

・紫の上が亡くなった後に光源氏が過ごす一年、切なさが伝わってくる

 

 

■最後に、本文がなく巻名のみである雲隠の巻について、ディスカッションしました。

「神のような光源氏の死をあえて書かなかった」「光源氏の晩年は読者の想像に任せた」など、巻名のみで本文のないことについて、いろいろなご意見がでました。

 

光源氏の最期だけでなく六条御息所との出会いなど書かれていないシーンも多いというご指摘があり、「書かない、語らないというのは読者の想像を広げて、物語として強い」というご意見が出ました。書かれなかった部分を読者がそれぞれ補うことで、様々な解釈の源氏物語が成立するのでしょう。

 

 

■「光源氏の幼少・青年期の頃を振り返ると遠い昔のような気がする」と、ある参加者の方がおっしゃったように、今回の第7回までの読書会で、光源氏の人生を皆さんと一緒に読み進めてきたのだなと感慨深いものがありました。

次は、第三部が始まります。光源氏が物語から退場した、光なき世界を皆さんと読み深めていくのが楽しみです!

 

■ご参加くださった皆さま、本当にどうもありがとうございました!!

次回もどうぞよろしくお願いいたします。

【投稿者】NAOKO

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