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第35回考える読書会 『源氏物語』第8回(匂兵部卿~総角)

■『源氏物語』を読み進めていく企画の第8回目(全10回)。

参加者16名(男性7名、女性9名)。訳者は決めずにお好きなものを読んできていただいております。

 

 

■初めに、今回の範囲を読んで薫の恋情と行動についてどう思うか、お聞きしました。

 

・光源氏と違い薫の行動にイラっとする

・薫の恋心も行動も理解できないので、皆さんの考えを聞いてみたい

・ちょっと自分に似ているような気もする

・一途で頑固で複雑な人

・光源氏や柏木ほど突破する力がないけれど、応援したくなる

・まじめで不器用で自分のことがわかっていない

・薫はわけがわからない人で、一貫性のないキャラクター。好きになれない

・大君との関係が紳士的で、悩みも現代的

・大君との関係を見ると、この時代でもこんな紳士的な行動をとれるのかと思った

・薫は真面目で優しく押し切れない。あと一押しすれば成就するのにという恋は今でも結構あるのでは
・もし大君がずっと生きていれば、何年後かに大君といい関係になっていたように思う

・本当の父である柏木に似て、皇族の娘だけを恋愛対象にしているような気がする

・薫は、魂の救済を大君という恋愛対象に求めているのでは

・薫は本気で大君のことが好きだったのか

・薫と大君が結ばれてもうまくいかないと思う

・薫は、自分は何者かと考え求め、現代的な人間

・薫はネガティブな心を持ちすぎているように思うが、彼の出生の秘密が影響しているのか

 

今まで光源氏のプレーボーイぶりを調子が良い、信じられないと批判的でしたが、ここにきて薫の優柔不断な行動や仏道に専念できない俗っぽいところに、苛立ったり理解できないという感想が多いのが印象的でした。

薫の恋については、一途さを支持する方もいれば、本当の恋心ではないと考える方もいらっしゃいました。また、薫と大君の関係も、成就すればうまくいくと思う方とうまくいかないと思われる方に意見が分かれました。

「薫はいったい自分は何者なのか、なぜこの世に生まれたのかという近代的な悩みを持ち、父の罪を背負って生きている」というご意見が出ました。母を追い求めた光源氏とは違う、薫のアイデンティティの追求について、皆さんのいろんなご意見・感想が興味深かったです。

また、薫の匂いについて、どのような意味を持つのか、どんな匂いなのか、など関心が集まりました。

 

 

■今回の範囲(匂兵部卿~総角の巻)を読んでの感想もお聞きしました。

 

・最初の3帖が読むのに苦労した

・橋姫から読みやすくなった

・宇治十帖は面白かった

・物語が単純でなくなった

・薫が出生の秘密に縛られているのが切ない

・光源氏のようなスーパースターがいなくなり、光源氏が持っていた能力を薫と匂宮で分け合っている

・宇治十帖の登場人物は、夏目漱石の小説の主人公と重なる部分があるように思った

・光源氏がなくなり豪華絢爛の時代が終わった

・八の宮の話が面白かった

 

 

■その後、事前にお配りしておいた資料に基づいて、匂宮三帖と宇治十帖について簡単に説明しました。

匂宮三帖は、光源氏没後の源氏家・頭中将家、髭黒家などのその後が書かれていますが、読むのに苦戦した方が多かったようです。

 

宇治十帖は、光なきヒーロー不在での物語の始まりです。「正編の登場人物たちはみな向上心があったが、宇治十帖の人物には向上心がない。紫式部が意図的に書いているとしたら面白い」「宇治十帖では、登場人物がみな枠からでない、自分の枠の中で生きている人たちの物語」「宇治十帖からは紫式部がギアチェンジして書いている」などの様々な鋭いご意見が出ました。

 

 

■次に、資料で「親王」について説明し、桐壺帝の第八皇子・八の宮と同じく桐壺帝の子で臣下となった光源氏とを比較しました。

妻を亡くし娘の乳母に逃げられ住む家も焼け財力もない八の宮について、「大君の乳母がいなくなった点は八の宮に同情すべきだが、しっかりしてほしい」「八の宮は奥さんにとってはいい人だったが、頼りない」「八の宮が俗聖になったのは現実逃避ではないか」「娘に対して無責任」など、厳しい声が上がりました。八の宮と比較すると、光源氏は配慮ある行動をとっていたと光源氏のスーパースターぶりを評価する声が多く、一方で「当時は八の宮のような人が実は多かったのでは」という話もでました。

 

「八の宮の育て方により、大君の自己肯定感が低くなってしまった」「八の宮の娘たちへの教えが、呪縛のようになってしまっている」など八の宮と大君の関係にいろんなご意見が出ました。紫式部も母を早くに亡くし、父子家庭で育ち、そのあたりの思いを物語にどう反映させているのか気になるところです。また、同じ落ちぶれた皇女として末摘花との比較でも盛り上がり、「末摘花は男親に愛されて育ったが、大君たちは愛されていたのか」などご意見がでました。

 

 

■さらに、平安時代の仏教について資料で簡単に説明し、出家についてなどで話が盛り上がりました。そして、最後に、今回の読書会を終えての感想をお聞きしました。

 

・盛り上がりの方向性が今までと変わってきたように思う

・出家の話だけでこんなに盛り上がるなんて、とても面白かった

・今回からテイストが変わったように思う

・人間臭さが発見できた

・薫の匂いが出生の罪を表しているという意見が印象的で切ない

・みんなで読むので楽しみ方が増えた

など

 

「次回が楽しみ」という方が多く、薫と匂宮と中の君がどうなるのか、光源氏の物語とは違う楽しみ方になってきたように思います。ある参加者の方がおっしゃったように、人間臭い登場人物たちのお話が現代の小説に近いものがあるのかもしれません。

 

■ご参加くださった皆さま、本当にどうもありがとうございました!!

残すところあと2回です。次回もどうぞよろしくお願いいたします。

【投稿者】NAOKO

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