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これまでの読書会

第13回(6/26)ノンフィクション横浜読書会

みなさんこんにちは、Yuningです。
梅雨のしとしと雨というよりも、なんだか台風のような雨と風の日々が続いていますが、元気にお過ごしでしょうか。
6月26日にオンラインにて第13回ノンフィクション読書会を開催しましたので(女性7名うち初参加1名、男性5名の合計12名)、さっそく持ち寄られた素敵な本たちをご紹介したいと思います。
【ご紹介いただいた本】
 
◆「女に生まれてモヤってる!」 ジェーン・スー/中野 信子 著 
言葉と科学の世界で活躍する著者らによる「女性として生きること」をテーマにした真摯な対談集。女性はみな今の社会構造によって多かれ少なかれ傷つけられた経験があるし、男性もまたゲタを履かされた分のプレッシャーに苦しんでいる。「男と女、どっちが得か?」という問いに答えは出ないが、自分が一番無理せずに生きられる場所を探そうというメッセージは広く万人にとって有用なものである。
 
◆「82年生まれ、キム・ジヨン」 チョ・ナムジュ 著 
キム・ジヨンというのは1982年生まれの韓国人の女性に一番多い名前だが、本書の主人公であるキム・ジヨンは33歳、3年前に結婚して娘がいる。自身の歩んできた半生を振り返る時、長きにわたって女性たちが心に閉じ込めてきた思いが徐々に明らかになる。「私は今まで手に入れたものも未来も全部失うかもしれないのに、あなたは何を失うの?」その言葉を夫に突き付けることができた女性は何人いるだろうか。
 
◆「炎上 CMでよみとくジェンダー論」 瀬地山 角 著 
テレビが普及し、CMが広く人目に触れるようになった時から「炎上」は繰り返されてきた。なぜならCMは老若男女さまざまな人が見るが、それだけ価値観もさまざまであり、同じCMがある人々には歓迎されても別の人々には不快感をもたらすからだ。特にジェンダー方面ではこの点が顕著で、訴求する層を特定しすぎても炎上するし、無意識に「べき論」が織り込まれてもやはり炎上する。時代の価値観を映し出す、これもCMの役割かもしれない。
 
◆「空気を読む脳」 中野 信子 著 
日本人は空気を読めてしまうばかりに、集団の結束を好み、「~すべき」という概念の拘束力が強く働く。女性たちはことさら”言葉に呪われて”いて、「~すべき」から外れることに強いプレッシャーを感じ、それに縛られて苦しい思いをしている。客観的な視点に立つこと、失敗してもいいと思えること、自分も相手も責めないこと。インドのことわざのように、「他人に迷惑をかけない」ことよりも「他人の迷惑を許す」こと。それできっと生きるのが楽になる。 
 
◆「生き延びるための思想」 上野 千鶴子 著
古来男性の聖域とされてきた職業軍人になることを選ぶ女性も増えてきたが、男性と同じように「戦い死ぬ権利」を求めることはフェミニズムなのだろうか?暴力が支配する非人間的な集団においては、女性が男性化するしかないが、本来フェミニズムが目指すのは弱者が強者に成り上がることではなく、弱者は弱者のままで尊重されることなのではないか。反響を呼んだ東大での最終講義(新版に収録)は必読。
 
◆「薔薇はシュラバで生まれる」 笹生 那実 著
数々の名作を生んだ少女漫画のレジェンドたちの元でアシスタントをしていた著者が当時の貴重な体験を描いたコミックエッセイ。漫画の制作は今では効率を重視した分業制が多いが、当時は大きなテーブルやこたつに皆でわいわいと座って作られていた。若かった漫画家たちと若かったアシスタントたちの青春がここに記録されている。
 
◆「奥さまは愛国」 北原 みのり/朴 順梨 著
なぜ「普通の主婦」が愛国活動にはまるのか?増えつつある愛国女性たちの活動の場(朝鮮学校や靖国神社)を取材し、その思いに迫ったルポルタージュ。ヘイトスピーチの中には女性蔑視のものもあるし、保守言論人の講演会ではよくフェミニストが攻撃されるが、そこにも女性はいる。女性の中にもフェミニスト嫌いはいて、「被害者ぶるな、弱者ぶるな」という気持ちを持っているのだ。自分が声を上げられないから、声を上げる人を憎むのだろうか。心理的に根深い問題だ。
 
◆「赤と黒」 スタンダール 著
◆「21世紀家族へ」 落合 恵美子 著
紹介者には「赤と黒」で主人公の運命に決定的な役割を果たすレーナル夫人が30代とはとても思えない精神年齢の低さに思えるが、女性から見た時にその点はどう映るのか気になるとのことだった。「21世紀家族へ」は家族の戦後体制について議論した古典で、一昔前のジェンダー観が見て取れる写真が印象的。「チカン」がそのまま海外でも使われる言葉となったらしいが、まったく不名誉なことである。
 
◆「男社会がしんどい」 田房 永子 著
ずばりタイトルが示すように、男社会の中で生きなければならない女性たちは日々しんどい思いをしている。痴漢犯罪は悪びれもせずエロコンテンツとして消費され、家事育児に関する議論では女同士を対立させることで根本的な問題から目を逸らせ、声を上げようにも男社会は女性の声に聞く耳など持たない―。著者の別の作品「母がしんどい」では母との確執と葛藤を描いているが、これらの「しんどさ」はつながっていると感じた。
 
◆「炎上 CMでよみとくジェンダー論」 瀬地山 角 著 
別の紹介者も同著を取り上げ、広告の炎上史が1970年代に放映されたハウス食品のCMにまでさかのぼることに驚く。昔は職場に行けば女性がお茶を淹れてくれたが、今では自分の上司が女性だ。かように時代は変わったが、広告の炎上がこれでなくなることは決してないだろう。新しい時代には新しい形の「思い違い」や「べき論による分断」が生まれ、常に誰かが疎外されて炎上の種となるからだ。
 
 ◆「説教したがる男たち」 レベッカ・ソルニット 著 
原題はシンプルに「Men Explain Things to Me」。こちらが女性と見るや、上から目線で頼んでもいない講釈を垂れ出す男性に会ったことがない女性はきっといないだろう。そのこと自体がこの世界に存在する圧倒的な不公平さを物語っている。著者本人に向かって本書を指して「君はこの重要な本を知ってるか?(どうせ知らないだろう)」と聞いた男さえいた。真相を知った時のその男の表情が見てみたいものだ。
 
◆「男尊女子」 酒井 順子 著 
「男尊女卑」の社会を作り出し維持しているのは、もしかして男性を立て男性に頼ることを生存戦略とする「男尊女子」のせいもあるのではないか―。その方が事が丸く収まる、無駄なエネルギーを使わなくてすむ、生きていく上でコスパがいい、女性たちにそう思わせているのだとしたら、そのこと自体が社会の歪みを内包しているといえる。それは、著名人となった五郎丸選手が「三歩下がって歩く女性がいい」と言える社会であることからもわかる。
 
◆「辛夷開花」 松島 みどり 著 
原始社会は母系社会であり、平安時代も通い婚という女性が男性を受け入れるかどうか決めることができる社会だった。武力のある者が力を持ち、戦争の時代になってから男の社会になったのであり、そのように人類の歴史を振り返ると興味深い。差別せずにお互いを尊重しようというスローガンに反対する人などいないのに、社会というのはそんなに単純ではないようだ。
 
◆「男をこじらせる前に」 湯山 玲子 著
金と地位と女、男が手に入れるべきものは長らくこの三つと言われてきたが、そんな男社会のヒエラルキーも時代の変化がやってきた。「男」で生きることが不自由でツラくなってきた今の男性たちは、心のどこかで鎧を脱ぐ方法を探し始めている。強者になって弱者の上に立たなくても、あるがままの自分で楽に生きられる社会。結局、男も女も求めるものは同じなのだ。
 
いかがでしたでしょうか。
ジェンダーとは、その多様さゆえに誰かを疎外してしまうこともありますが、同時にすべての人にとって関わりのある深いテーマだと思いました
 
次回のテーマは「メメント・モリ」です。
あなたもぜひ一緒に知的冒険に出かけませんか。
 
【投稿者】Yuning

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