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これまでの読書会

第11回(2/7)ノンフィクション横浜読書会

こんにちは、Yuningです。
冬らしい寒さの中、11名(男性5名、女性6名、うち初参加の方1名)の方をお迎えして第11回ノンフィクション読書会を開催いたしました。テーマは「足跡」で、それぞれの解釈が楽しい本選びとなりました。
ではさっそく登場順に本の紹介に参りたいと思います。
【ご紹介いただいた本】
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<津軽三味線ひとり旅> 高橋竹山著
門付けとは門前で音曲を奏して金品や米をもらう芸能のことで、それを行う男性の旅芸人を「ぼさま」、女性を「いたこ」と呼んだ。はしかで視力を失い、「自分はほいと(乞食)ではなくぼさまなのだ」という誇りを持って、津軽三味線とともにすごした自らの放浪の生涯について素朴な津軽ことばで綴った一冊。晩年、彼の演奏はLPレコードや映画にも取り上げられ、津軽三味線の音色を世に広めた功績は大きい。
<アースダイバー> 中沢新一著
縄文地図を片手に、まったく新しい東京散歩に出かけよう。これは読者が体験する等身大の「ブラタモリ」であり、好評を博した大阪版に続いて待望の東京版が登場した。途方もない時間をへて少しずつ積み重ねられてきた街の歴史、その目に見える表層世界と奥に潜む深層世界がシンクロする時、見慣れたはずの街の見え方が驚くほど一変するのを体験してほしい
<ナンガ・パルバート単独行> ラインホルト・メスナー著
人類初の8000m峰完全単独行に成功し、ヒマラヤ登山の常識を変えたラインホルト・メスナーは、1978年にナンガ・パルバート峰へと挑んだ。それは記録のためでも名誉のためでもなく、絶対的な孤独の中で自分自身と向き合い、自分が自分になるためにたった一人で山に登る必要があったのだ。弟との死別、妻との離別。自分しか話す相手がいないから、山は人を思索家にしてくれる。本書はその思索の記録である。
<日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実> 吉田裕著
アジア・太平洋戦争による日本人死者は300万人を超えるが、その大部分が戦争末期である1944年以降のわずか1年ほどの間に亡くなったという驚くべき事実が示される。戦闘死よりも病死や餓死が多くを占め、そんな悲惨な状況を引き起こした誇大妄想的な人命軽視の精神論は、現代のブラック企業問題にもそのまま通じており、問題の根底にあるメンタリティが変わっていないという恐ろしい事実に気付かされる。
<八本脚の蝶> 二階堂奥歯著
群を抜く読書家であり、幻想文学など多くの書物を愛した女性編集者の日記ブログの書籍化。ブログの更新が止まってしまったのは、彼女が二十代半ばにして自らの意志でこの世を去ったからである。その冴え渡る感性と圧倒的な言葉の数々が記録され、世に出されたことはせめてもの救いだったのかもしれないが、日記に綴られた一人の女性の生きづらさが読む者の胸に迫り苦しい。たとえその肉体がもうここにはないのだとしても、その言葉は永遠を生きる。
<ジュエリーの世界史> 山口遼著
人間は古代より身を飾って美しくなりたいという欲望にとりつかれ、自分の体に化粧や刺青を施すことから始まり、やがてそれが服や装飾品といった外側へと移っていく歴史的変遷が興味深い。また、ティファニーやカルティエといったハイジュエリー・ブランドがどのようにして生まれたか、その始まりを知る人は少ないだろう。ミキモトに入社して宝石業界に50年、本を2500冊以上読んだという著者は、まさに宝石ぐるいの名に恥じない。
<モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語> 内田洋子著
<もうひとつのモンテレッジォの物語> 内田洋子・モンテレッジオの子供たち著
人知れぬ山奥に、本を愛し、本を届けることに命を懸けた人たちがいた。イタリア・トスカーナの山奥にあるモンテレッジォ村は、活版印刷によって創成期を迎えた本を運び広めた本の行商人たちの村であり、その姿を刻んだ石像やここでしか見られない「本の収穫祭」が存在する。ふんだんなカラー写真とともに、イタリアの権威ある書店賞「Premio Bancarella」発祥の地を旅する至福の時間。
<追跡 金正男暗殺> 乗京真知・朝日新聞取材班著
2017年2月に起きたあの驚くべき暗殺事件が「何も知らない人間が単なるいたずらだと思ってやったこと」だったなんて、誰が信じられるだろうか。取材班は2年半にわたって現地の警察、実行犯たちの家族、そして被害者の友人まで綿密に取材し、事件の真相に迫ろうとする。現指導者からの最高指令だったという異母兄の抹殺が、見せしめとして白昼堂々と国際空港で行われた事実が背筋を凍らせる。
<カッコウはコンピュータに卵を産む 上・下> クリフォード・ストール著
セキュリティの概念がまだ甘く、コンピューターをコマンドで操作していた時代に起きた実際の国際ハッカー事件を描く追跡ドキュメント。新米のシステム管理者となった若き天文学者が、たった75セントのシステム使用料の誤差から調査を開始し、地道で膨大な作業の果てにアメリカの軍事情報に手をのばす電子スパイの正体を突き止めていく。巨大な相手に孤軍奮闘した本人による書き下ろしを堪能あれ。
<SHOE DOG(シュードッグ)> フィル・ナイト著
厚底騒動でも注目を集めた「ナイキ」の創業物語は、誰もが鹿げたアイデアと笑うようなことを実現させようとノンストップで走り続けたフィル・ナイトの人生そのものといえる。戦後復興期に日本でオニツカに惚れ込み、アメリカでその靴を売りまくって事業を広げたフィルは、その後も経営危機を日商岩井に救われるなど日本と浅からぬ縁があった。フィルは人に仕事を任せるのが上手かった。チームに天才はいなかったが、情熱に勝る才能はないのだ。
<家業から100年企業へ 重慶飯店が年商70億円の龍門グループになれた理由> 上阪徹著
重慶飯店、中華学校、そしてローズホテル(旧ホリデイ・イン横浜)と今ある横浜中華街の景観を形作った企業の一つである「龍門グループ」のたどった足跡と見据える未来を描く。オーナーシェフではなかったゆえに従業員を家族のように大切にし、常に新しい高みを目指した創業者夫妻、自身の夢よりも家業を選んだ二代目兄弟、そして今は次世代へ事業を継承するために全社一丸となって準備が進められている。家業を100年企業にしてみせようとするひたむきさが眩しい。
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いかがでしたか。
私は「足跡」と聞くと、「其实地上本没有路,走的人多了,也便成了路。(もともと地面に道はないが、多くの人が歩いてそれが道となる)」という魯迅の『故郷』の一節が思い浮かびます。私たちのこの一歩も、どこかに新しい道を作り出すことに違いありません。
あなたもぜひ一緒に知的冒険に出かけませんか。
【投稿者】Yuning

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