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書評『勝ち続ける意志力』KURI

最近、神経がそよいで仕方がない。

自分をとらえることができなくて、パトスが暴れロゴスの中のエトスに真意を見出す。私を支えてくれている本達と読書ができる環境に感謝しかない。

そんな中、衝撃の一冊と出会った。

本書は格闘ゲーム界のレジェンド・梅原大吾の一冊。彼は17歳にして世界一になり、日本で初めて「プロ・ゲーマー」という職種を築いた。2010年「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロ・ゲーマー」としてギネス・ワールドレコードにも認定されている。

恥ずかしながら本書を手に取るまでこの天才の存在を知らなかった。よって恥ずかしながら本書を読むまでこの天才の才能に触れることすらなかったことになる。私はそれだけ格闘ゲームの世界を知らない。

そんな私が軽い気持ちでプロローグを読み始め、後頭部を強打するくらいの衝撃にあう。本文はもちろんのことエピローグに至るまで名言だらけで、読み終えるまでにノックダウン寸前だった。

私の心を鷲掴みにした本書は、勝負哲学の書。本物の強さの神髄であるため、万人に通じる勝負論であり一般の生活や仕事にも応用がきくと思う。実際、勝負の世界とは程遠い呑気な私ですら、自分の経験と重なる部分があった。案外、平凡な人生でも勝負しなければならない場面は数多くあるのかも知れない。

”敵は自分自身”と語る著者は、常に自分と向き合い、戦い続けるトップランナーである。それ故に孤高の人という印象が残る。そんな梅原という人が如何にして形成されたのかは、本書の流れに沿って、幼少期から現在に至るまでを時系列で追ってみると、ある程度は理解できるだろう。

梅原は姉の影響で5歳からゲームを始める。ゲームの才能は人並み以上と思いつつ、ものすごく勉強のできる姉を見て、自分は圧倒的なまでの努力をしなければ本当の強さを手に入れることはできないと考える。そんな梅原がゲームに夢中になることに対して、両親は注意することはなかったようだ。学校の友人との人間関係を模索しつつもゲーム中心の生活を続け、17歳の1998年11月8日、サンフランシスコで開催された「STREET FIGHTER ZERO3」で世界チャンピオンとなる。

この先は、ぜひ本書を読んで天才の考察を肌で感じてほしい。23歳の時に麻雀の世界へと転身し、後、介護の仕事に就くが、再びゲームの世界へと舞い戻る。時代の波が梅原を必要とした展開は読み応えがある。

梅原は、「勝つこと(結果を出す)」ことと「勝ち続ける(結果を出し続ける)」ことは根本的に性質が異なるという。センスや運、一夜漬けで勝利を手にしてきた人間は勝ち続けることは難しく、勝ち続けるための王道や必勝法といった特別なテクニックは存在しない。ただひたすら一歩一歩成長するのみ、と語る。遠回りをすることでしか手に入れることのできない強さがあるからだ。

そんな梅原には、どんな時でも努力し続ける自分を自分自身が支え、そんな自分を信じて疑わない強い気持ちが備わっている。それこそが勝ち続ける強さなのではなかろうか。

【投稿者】KURI

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