第25回(1/16)旅のおもいで
■参加者9名(男性4名、女性5名)
初参加の方は2名でした。
今回課題となった本は「旅に関する本」です。
日々の生活に追われる私にとって、時間とお金を必要とする「旅」は贅沢なことです。犬を飼うようになると、ペット専用のホテルに預けて家族旅行するのも気持ちがのらず、ますます旅行が縁遠くなってしまいました。もはや帰省は旅行の一つに含まれます。
ライフネット生命のCEO出口治明さんは年間300冊以上読んでいる無類の読書家にして旅行が趣味の知識人です。本を読んで興味を持った都市を訪れるのが楽しみのようで世界各国1300ほどの街を訪問されているうえに、ヴェネチアだけでも20回行かれているそうです。何とも羨ましい!まとまった時間が取れたなら、国内の文豪たちが愛したゆかりの宿・温泉宿巡りでも行ってみたいと思います。
さて今回ご参加いただいたみなさまの「旅に関するエピソード」は、海外出張で異国を巡った話、転勤した先々でその土地の観光を満喫したエピソードなど、こちらも羨ましい話が多かったように思います。他には家族旅行など生涯想い出に残るような貴重なお話や、新婚旅行の写真をお持ちいただいた方もいました。ノルウェーの澄んだ空気が伝わるような写真はとても開放的で牧歌的な風景が広がり、晴れやかな表情が印象的でした。貴重なお写真やご意見をありがとうございました。
それでは、旅に関するお薦めの本をナビゲーションにして知的探索の旅に出かけましょう!
【ご紹介いただいた本】
▶2冊を読み比べてみよう。
『新編 銀河鉄道の夜 』宮沢賢治
少年ジョバンニが親友カムパネルラと銀河鉄道に乗って幻想的な夜空の旅をする。宮沢賢治が描く世界観は唯一無二であり、如何様にも形容しがたい。よって出版社によってストーリーが違うということも頷ける。読み比べることで間口の広さと奥行きの深さを感じて欲しい。
『日本奥地紀行』イザベラ・バード
明治初期、イギリス人女性が東京から北海道までの長い道のりを旅した記録。日本という国を包み隠さず正直に、そして感性豊かに書きあげた旅行記も珍しい。日本人の不衛生さ、馬との関わり合いの下手さ等耳が痛い。アイヌ人の考察も興味深いところ。
『場所はいつも旅先だった 』松浦弥太郎
『暮らしの手帖』の前編集長・松浦弥太郎の自伝的エッセイ集。旅とは何かを著者の想い出と共に巡る一冊。旅とは未知なる場所をかりて自分とであうこと。最低の中から最高を見つけたい、または最高をもって最低を知りたい。
『續 さすらいエマノン』鶴田謙二
記憶と精神を失ったエマノン、それらは子供のエマノンへと受け継がれる。そんな彼女の習性ともいうべき人生の旅は『おもいでエマノン』の作品へと続く。情景に溶け込むエマノンの美しさと際立つ危うさに思わずため息がでる。
『遠い太鼓 』村上春樹
村上春樹が1986年から3年間暮らしたイタリア、ギリシャでの生活を綴ったエッセイ。ほとんど縁のなかったヨーロッパの地域は会話にも一苦労。手探りで家を探し、日々の食材を手に入れる。語学も異国でのトラブルもどこか温かみを感じさせるエピソードとなる。
『雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行 』村上春樹
トルコとギリシャ正教の聖地・アトス島を旅したちょっとハード気味の旅行記。決して楽しそうではないが、旅先で出会ったひとたちや食べ物、そこで観た景色などが現地の空気とともに伝わりなんとも味わい深い。一度は行ってみたくなる一冊。
『もし僕らのことばがウィスキーであったなら 』村上春樹
ウイスキーの生産地であるアイルランドとスコットランドの旅行記。アイルランドの長閑な風土と上質なシングルモルトの香りが感じられる。蒸留し精錬された著者の言葉が熟成されて読む人の心に流れる。無性にウイスキーが欲しくなる。
『横浜タイムトリップ・ガイド』横浜タイムトリップ・ガイド制作委員会
住み慣れた横浜の街を観光するのにおすすめの一冊。関内、伊勢佐木町、馬車道が中心に書かれており、いままで気付かなかったその土地の由来や歴史が学べる。古い写真や地図も沢山掲載されており「ブラタモリ」さながらの新しい発見が満載だ。
『天才の栄光と挫折』藤原正彦
天才数学者の生涯を、ゆかりの地を巡りながら辿って行く旅。孤独な天才数学者たちは何を感じ何を見てきたのか。著者の美しい文章に奏でた、降りかかる栄光と挫折に鳥肌が立つ。
『心は孤独な数学者』藤原正彦
ニュートン、ハミルトン、ラマヌジャンという3人の偉大な数学者のひととなりや人生を見つめる旅。いったい彼らの一年の研究は数学界全体の功績にどれだけの影響を与えたのか枚挙にいとまがない。
『犬が星見た』武田百合子
著者は夫である武田泰淳と竹内好に連れ立ってソ連邦時代のロシア旅行に参加する。異国の地の食事や、夫との日常を伸びやかに描く。犬が星を見たような旅だった…あとがきが秀逸すぎて読んだ者の心を離さない作品。
『狼が連れだって走る月 』管啓次郎
旅はその土地を知ること。西の地平線に沈む赤く燃える無償の太陽、濃密な空の青、乾いた砂漠と冷たい風。旅の倫理と野生の哲学を探求する詩人思想家が感じた旅の書。
『見えない都市 』イタロ・カルヴィーノ
マルコポーロがフビライハーンに自分が訪れた不可思議な都市を語り尽くす幻想都市の物語。鏡の都市、死んだ人間の暮らす都市……55の都市はどれも魅力的で能動的。それらの息遣いを感じる旅に出逢える。
『地球はグラスのふちを回る 』開高健
世界各国の旅を通して酒と食、煙草、釣りなど、をふんだんに盛り込んだ大人のエッセイ。肩肘を張ることのない開高健が極上に香る言葉で読者を酔わせる。
『雷桜 』宇江佐真理
徳川将軍・家斉の17男で気の病いに悩まされていた清水家の当主・斉道。静養の旅に出た先の雷桜の木で運命の女性「遊」と出合う。繊細で美しさが舞う時代小説。
『カリブー 極北の旅人』星野道夫
写真家・星野道夫が生涯追い続けた「カリブー」。アラスカの広大な大地に生息する彼らの姿は華麗で美しい。本書で装丁を手がけたデザイナーはおなじみ三村淳。
▶タイへ旅行する者と、タイで旅行者を招き入れる者の作品
『プラットフォーム 』ミシェル・ウエルベック
父親の遺産を相続した主人公は、タイ・ツアーに参加してある女性と出会い、人生が大きく変貌していく。性欲についての描写が濃厚で徹底されており執念さえ感じる。近年大注目の著者の今後に期待。
『観光』ラッタウット・ラープチャルーンサップ
アメリカ生まれバンコク育ちのタイ人の著者。タイの暑い空気と甘い匂いが目の前に広がる本書は旅人を迎え入れる側の目線で描かれる。人生の哀しい断片を瑞々しい感性で彩った若き感性があふれる作品。
『世界のごちそう』本山尚義
神戸のレストラン「多国籍料理パレルモ」のオーナーシェフが食を中心にアジア&ヨーロッパを旅した放浪料理修行のエッセイ。良き出会いが味の深みを生み出す。
『図南の翼 十二国記 』小野不由美
豪商の娘として育った少女が先王の没後、荒廃した供国を憂い、蓬山を目指す物語。12歳の少女が十二国供王誕生への遠大なる旅へと誘う物語。
▶雑誌「Esquire」に掲載されていたエッセイと写真集
『モノリス』日野啓三
惑星地球の、そして人間の意識の変容をめぐって砂漠・鉱物・古代遺跡・森・細胞・脳・遺伝子そして都市―多次元宇宙に渦巻くしなやかな自己形成の諸力を全身全霊で交感する、日野啓三の詩的エッセイ集。
『メタモルフォセズ』稲越功一
テクノロジーと金属の神々によって遺伝子操作された異形のメガロポリス。無機質でスタイリッシュな空気を纏う。雑誌「Esquire」軌跡の写真集。
参加者のみなさま、ありがとうございました。
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皆さまの参加をお待ちしております。