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第59回考える読書会『A・ウェイリー版 源氏物語』第4回(薄雲~胡蝶)

■参加者11名(男性5名、女性6名)

『A・ウェイリー版 源氏物語』(毬矢まりえ・森山恵姉妹・訳、左右社)を全10回で読み進める企画の第4回目は、薄雲~胡蝶の巻まで。

■解説では、「女房」などについて、簡単に説明しました。

■今回の範囲で気になる人物を皆さんにお聞きしました。

 

・ムラサキ 3名

・ゲンジ 2名

・ユウギリ 2名

・アサガオ 2名

・フジツボ 1名

・タカマヅラ 1名

 

ムラサキを挙げた方が一番多かったです。

「ムラサキは今まで感情があまり出てこなかったが、今回の範囲で女性としていろんな感情を吐露している」というご指摘のように、「今までの天真爛漫な少女」から、嫉妬・ゲンジの愛を失う不安などに苦悩する女としてのムラサキが際立ってきます。

アサガオとゲンジの関係にやきもきして涙するムラサキ。ニューパレスで初めての新年の夜、ゲンジはアカシのもとへ行き一人で寝るムラサキ。ゲンジが世話するタマカヅラに、娘のように養育するといってゲンジに引き取られた昔の自分を重ねるムラサキ。ゲンジの情交のあった女性についての話を聞かされるムラサキ。

いろんな場面で、ゲンジに一番愛され優遇されているはずであるムラサキの、切ないシーンが出てきます。読書会のなかでも、いろんな場面が挙げられました。

 

一方、ゲンジが唯一落とせなかった女性アサガオ。彼女の思慮深いところ・冷静さについても様々なご意見が出ました。アサガオのつれない返歌に、カっと頭に血がのぼったり、こんな仕打ちを受けたことを誰にも言わないと約束してくれとお願いするゲンジにも、新たな一面を知ると同時に、アサガオのゲンジを前にしても動じない強さについて考えさせられました。

 

三十路を超えてものごとには限りがあることを感じ始めたゲンジ。彼の〈ありふれた花一輪、木一本でも美しいものを目にすれば、それだけで一瞬にして、人生は意味もリアリティも満ちたものになるのだ〉というセリフを多くの方が賛美しつつ、実際のニューパレスでの彼の思い・行動は、自然を愛でるだけでは満足できていない煩悩まみれであり、多くの方が突っ込みを入れていました。聖人君子ではない、そんなギャップを持つおじさんになってきたゲンジを、気になる人物としてあげている方もいらっしゃいました。

 

 

■スエツムハナについても、盛り上がりました。彼女についての顔や容姿・服のセンスについていろいろとひどく書かれていますが、なぜ源氏物語の中に登場させたのか。「紫式部が愛着を持っている登場人物」「紫式部自身が愛される存在でなかったから、ゲンジという男性の愛情を受けられる女性を書きたかった」「生きる力のない女性を意地悪く書きたかったのか、そうでないのか」「容姿・和歌などのセンスはないが、財力のある男性の庇護を受けられると、愛はなくても幸せに暮らせるという事実を描きたかった」「ある意味、たくましい女性である」など、スエツムハナという存在を描くことは、どのような意図があるのか様々なご意見が出て、考えさせられました。

 

 

■スエツムハナのエピソードだけでなく、全体的に、コミカルな部分がより楽しめるようになったという感想が何人かの方から上がりました。他の現代語訳よりコメディとシリアスの対比がバランスよく感じられ、これはウェイリーの解釈によるものなのか、それとも源氏物語自体が本来そうであって、ウェイリー訳または姉妹訳によってそのバランスがよく見えてきたのだろうか、という話も出ました。

 

 

■「“紫式部が書いた源氏物語” “ウェイリーが解釈した源氏物語”“ウェイリー訳を日本語訳した毬矢・森山姉妹訳の源氏物語”という3重構造の源氏物語を読むのが、今までの現代語訳を読むのと違う」というご指摘がありました。読書会でも、紫式部が書き手として何を書きたかったのかについて考えるときもあれば、ウェイリーがどのように解釈したかということに思いを馳せることもあり、また、毬矢・森山姉妹の翻訳の工夫や素晴らしさを味わい共有することもあります。今までの源氏物語の読書会とは違う楽しみ方をしていることに気づかされました。

 

回を重ねるごとに、皆さんとの感想共有が深まってきていると思います。今後、ウェイリー訳源氏物語読書会がどのようになっていくか、とても楽しみです。

 

 

■ご参加くださった皆様、素敵な読書会になりました。どうもありがとうございました!!

次回もどうぞよろしくお願いいたします。

また、5回目以降からご参加くださる方、お待ちいたしております!

【投稿者】NAOKO

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