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これまでの読書会

第24回(10/10)考える横浜読書会『バベットの晩餐会』

■参加者11名(男性3名、女性8名)でした。

課題本は20世紀のデンマークを代表する作家イサク・ディネセンの『バベットの晩餐会』。
ちくま文庫の『バベットの晩餐会』には、「エーレンガート」も併録されていますが、今回は「バベットの晩餐会」一作品をじっくりと読み解きました。

■読書会前半

「バベットの晩餐会」の印象に残った場面を挙げていただきました。

・一番多く挙げられたのが、ラストのシーン。
賞金で当てた1万フランを晩餐会のためにすべて使わなくてもよかったのにと、感謝の気持ちを表わす姉妹。それを聞いて、バベットが、みんなのためではなく自分のためにしたことだと主張して「私はすぐれた芸術家なのです」と2度言い切るところ。また、そのあとの「すぐれた芸術家は貧しくなることなどないのです」というバベットのセリフ。

・晩餐会の前に言った信者のセリフ。2名の方が挙げられていました。
「舌というやつは…(略)…ちっぽけなくせに、ことごとにあることないことを得意げにしゃべり立てる。まったく人間の手には負えない厄介物で、命取りにもなりかねない毒がいっぱいときている」。言葉という毒と味覚としての食べ物の毒と2つを意味するのでは。

・レーヴェンイェルム将軍とマチーヌの別れのシーン。
「もう二度とお目にかかることはないでしょう。ぼくはここで、運命とは過酷なもの、この世には不可能なことがあると知りました」という30年前の彼の別れの挨拶。一方、再会を果たした晩餐会後の挨拶は「わたしは今後生きている限り、いつもあなたのおそばにおり、あなたもそれがよくお分かりになっているのだと。(略)この美しい世界では、すべてが可能なのだと」と対照的。

・パパンが、姉妹にバベットを紹介する手紙。
「バベットには、料理ができます」。バベットが有名料理店のコックだったという正体を明かさないところに、なんでの疑問。ある意図が感じられるかも、と興味深いご指摘でした。

など、印象に残った場面を挙げていただく中で、多くの発見・気づきがありました。

その後、NAOKOより資料を使って解説させていただきました。著者の経歴やパリコミューン、宗教、カフェ・アングレなど理解を深めるのに参考になる事項を説明しました。

■読書会後半

「バベットの晩餐会」を読むポイントとして、
・芸術家・芸術とは
・プロテスタントとカトリックの対比
・アイロニーとユーモア
・運命・巡り合わせ
・名声・栄光の虚しさ
・この世ではかなわぬ愛や希望
・人生の選択
をあげ、どれが特にポイントになると思うかについて触れていただきながら、フリーディスカッションを行いました。
「芸術家・芸術とは」「プロテスタントとカトリックの対比」について特にポイントとして挙げられた方が多かったですが、ほかのポイントを挙げられる方もいらっしゃり、様々なテーマが重層的に織り込まれた味わい深い作品だということがわかりました。
以下、皆さんのご意見・感想です。

・バベットの潔さ・自信・芸術への思いの深さ・意志の強さが印象的。
・バベットは著者イサク・ディネセン自身であるのかも。
・カフェ・アングレで提供していた料理と今回の晩餐会の料理は、同じ芸術でもそこに込めた思いは同じだったのか。
・プロテスタントとカトリックの違いや異文化への恐れ、皮肉など各所に表れている。
・料理が芸術になりうるという点が驚きだった。
・バベットの力を注いだ料理で、人々が幸せになり、奇跡的な至福の時が訪れる、奇跡のような魔法のような芸術の力。
・晩年、食事をあまりとれなくなった著者が、料理について書いてあるこの作品をどのような思いで書いたのか。
・将軍とマチーヌ、フィリッパとパパン、それぞれの恋は成就しないけれど、30年後には精神的なところでつながり幸福を得ている。
・パリコミューンで、自分の芸術の理解者を敵とする道を選んだバベットは、遠いノルウェーの寒村まで逃げてきて、14年間何を思っていたのか。
・「慈悲と真実は共に会うのです。正義と幸福はお互いに口づけをすることになるのです」という晩餐会での将軍のスピーチが、30年前に将軍が牧師に言われた言葉と同じであることが興味深い。
・「われわれにはわれわれが選んだものが授けられております。しかしまたそれと同時に、われわれが選ぼうとしなかったものも、われわれには与えられているのです」という将軍の人生の選択についてのセリフが心に残った。
・将軍やパパンのように名誉・名声を得ても心が満たされない。一方で、華やかな外の世界で成功する可能性のあった美人な姉妹は北の果ての小さな村で幸せなのか。

などなど。

皆さんの感想・意見を聞きながら、隅々まで作品を味わうことができたと思います。
深い深い読書会でした。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

【投稿者】NAOKO

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