1. HOME
  2. これまでの読書会
  3. 第54回考える読書会『A・ウェイリー版 源氏物語』第1回(桐壺~若紫)

REPORT

これまでの読書会

第54回考える読書会『A・ウェイリー版 源氏物語』第1回(桐壺~若紫)

■参加者13名(男性4名、女性9名)

 

『源氏物語』読者会を2021年、2022年に各全10回で行ってきました。昨年、一昨年とも訳者は決めませんでした。今年は『A・ウェイリー版 源氏物語』(毬矢まりえ・森山恵姉妹・訳、左右社)を全10回で読み進めていきます。

第1回目の今回は、桐壺~若紫の巻まで。参加者の方も、2021年から参加して3巡目の方、今回初めて『源氏物語』を読む方、昨年は家庭の都合で途中から参加できず今回楽しみに参加してくださった方(ちょっと分厚い単行本を入れて通勤するため鞄を買い替えたそうです!)、多様なメンバーがそれぞれの思い・抱負を抱えて集まってくださいました。

 

 

■1000年以上日本で読み継がれている『源氏物語』。そして紫式部の執筆から、900年のときを経て、今から100年前のイギリスでウェイリーの翻訳のおかげで注目絶賛されました。版を重ね、フランス・オランダ・イタリアへと翻訳され続け、「世界の十二の名作のひとつ」とまで称された『源氏物語』。

解説では、「A・ウェイリーがイギリスで『源氏物語』を翻訳し出版した経緯」「天皇の恋愛」「源という姓が持つ意味」「源氏物語の対の構想」などについて、簡単に説明しました。

 

 

■以下皆さんのご感想・ご意見の一部です。

 

・カタカナでの表記やルビの使い方がとても魅力的

・ことばの使い方が面白い

・読みやすくてわかりやすい

・一昨年、昨年に続き、『源氏物語』を読むのは3回目だが、今までと全く違う世界

・初めて『源氏物語』を読むが、知っているけれど新しい物語を読んでいる感じがした

・初めて『源氏物語』を読むが自分の国の話なのに海外の話のよう

・本の帯の「ヴィクトリアン・GENJI」という言葉がよく、新しい世界が広がるのが楽しみ

・高校時代に授業で読んだ源氏物語は、文法とかに注目していたが、今回は物語に注目できた

・今までいくつかの現代語訳を読んだが、一番言葉が生き生きしていて、リラックスして読めた

・今まで読んだ現代語訳の中で一番すっと入ってきた

・A・ウェイリー版源氏物語では身分の差がほかの現代語訳ほど感じられない

・今までの現代語訳だと「寵愛」という表現が「愛に溺れた」になっているなど、スレートな感情表現が楽しめる

・昨年は若菜の回から参加し読み始めたので、今回紫の上の小さい時にあえてうれしかった

 

 

■「今まで読んだよりも、ゲンジのキラキラ感が増した」「紫の上との出会いが、前よりも気持ち悪く感じなかった」など、再読の方は、以前読んだよりもゲンジに好印象を持つ方が多かったです。「A・ウェイリー版は身分差を感じない」というある方の感想に多くの方が同意しました。一人の若者としてのシャイニング・プリンス・ゲンジが、生き生きと恋に悩み行動している様子に、応援したくなったのかもしれません。

一方で、いろんな女性と関係を持つゲンジをあまりよく思わない方もいらっしゃいました。

このゲンジへの評価も、読み進めるうちに印象がどのように変わるか興味深いところです。

 

 

■多くの方の感想で上がったのが、カタカナ表記やルビについてでした。とても新鮮で面白いという感想が多かったです。

 

「ナース」

「エレガント」

「ロマンティック」

「情事(ラブ・メイキング)」

「愛しい人(マイ・ダーリン)」

「パラダイス(九品浄土)」

「法華経(ロウフラワー)」

「メディテーション」

「チャペル」

「ゴシップ」

「フォークソング」

など

 

「部屋のキャンドルの灯りが、ペーパー・ウィンドウの隙間から漏れてきます」などのエキゾチックな表現から浮かぶ情景について、皆さんと堪能しました。

 

一方で「カタカナ訳に注目してしまい、筋の流れを追うのに苦労した」という参加者の方もいらっしゃいましたが、読書会を終えて「皆さんの話を聞いて、もっとカタカナ訳に注目して読んでみたい」という声も上がりました。

「ベッド」「カーテン」といったカタカナの表現に、自分の中で今まで作り上げた平安時代の情景とのギャップに、最初戸惑いましたが、読み進めていくうちに姉妹訳の『A・ウェイリー版源氏物語』の世界が上書きされてくるように思います。

今回の課題本は、参加者の方がおっしゃった「想像を広げられる訳」で、イギリスの当時の人々が『ザ・テイル・オブ・ゲンジ』の世界に惹かれたように、まっさらな心で新たな源氏ワールドに入り込んでいくことが一つの楽しみではないでしょうか。

 

 

■『A・ウェイリー版源氏物語』の衝撃・斬新さについての感想・意見が多く出ましたが、もちろん「エンペラー・キリツボとキリツボのレディの愛」「フジツボ・ユウガオ・ウツセミとゲンジの恋愛」「平安時代の天皇家の複雑な人間関係」といった物語そのものについての話も盛り上がりました。「恋愛や親子関係など人生に起きることは国境を超える」と参加者の方がおっしゃったように、『源氏物語』は、時代だけでなく国境も超える普遍的な物語だといえます。

 

 

■個人的には、エンペラー・キリツボのレディ・キリツボへの深い愛が特に心に残り、二人の愛の結晶ゲンジの誕生で、今回の範囲は長い物語のプレリュード(前奏曲)のような気がしました。今後どのような『ザ・テイル・オブ・ゲンジ』の音楽が奏でられるのか、楽しみであり、心を研ぎ澄ましてその世界に浸っていきたいと思います。

 

 

■源氏物語読書会、とてもなごやかに打ち解けた雰囲気でスタートした第1回目でした。

 

これから10回にわたり読み進めていきます。会を終えて「源氏物語は一度読んでみたかったので、皆と一緒になら読んでいけるかも」という感想が上がりましたが、初めての方は、読み終えなければ見えない『源氏物語』の世界とその魅力を、再読の方は外国の言葉と文化を通して見えてくる日本文化を超えた『源氏物語』の新たな世界と魅力を、皆さまと一緒に味わっていくのが楽しみです。

 

ご参加くださった皆様、どうもありがとうございました!!次回もどうぞよろしくお願いいたします。また、2回目以降からご参加くださる方、お待ちいたしております!

【投稿者】NAOKO

REPORT

これまでの読書会