1. HOME
  2. これまでの読書会
  3. 第53回考える読書会 『源氏物語』第10回(浮舟~夢浮橋)

REPORT

これまでの読書会

第53回考える読書会 『源氏物語』第10回(浮舟~夢浮橋)

■『源氏物語』を読み進めていく企画の第10回目、最終回。
参加者11名(男性4名、女性7名)。訳者は決めずにお好きなものを読んできていただいています。

■『源氏物語』の構成を以下の4つに分けたときどれが一番好きか、参加者の皆さんにお聞きしました。

1.不遇の貴公子が女性遍歴を繰り返し罪に落とされ、許される王朝色好み物語(桐壺~明石)
2.光源氏が権力闘争の末、この世の栄華をすべて独り占めしていく物語(澪標~藤裏葉)
3.権力の頂点にいる光源氏が因果応報のように妻に裏切られ翳りを見せていく話(若菜~雲隠れ)
4.光源氏の死後、彼の息子らの話から、浮舟の話へ(匂兵部卿~夢浮橋)

1.桐壺~明石の巻    3名
2.澪標~藤裏葉の巻   1名
3.若菜~雲隠の巻    1名
4.匂兵部卿~夢浮橋の巻 6名

昨年は、圧倒的に3(若菜~雲隠)を選んだ方が多く、次に1(桐壺~明石)、4(匂兵部卿~夢浮橋)の順でしたが、今年は4(匂兵部卿~夢浮橋)を選ぶ方が最も多かったです。
「再読すると印象も変わる」「読んだ時の自分の状況が、忙しいか・幸せか・しんどいかなどによっても感じ方が変わる」というご意見も出ました。

4(匂兵部卿~夢浮橋)を選んだ理由として、「暗いといわれる宇治十帖だけれど、心の中を丁寧に描いていて、近代文学だと思う」「共感できるところが多かった」「光源氏の物語は宮中の華やかな世界だったが、こちらは正編では描かれなかった人々のリアルな心情が書かれていて、読みごたえがあった」などが挙げられました。
1(桐壺~明石)を選んだ理由は「惟光・明石の入道が好き」「ストーリーに躍動感がある」「神話の始まりという感じがする」などでした。久しぶりの惟光・明石の入道の名が懐かしく、長いストーリーだったと実感しました。

■配布資料では『源氏物語』薄雲の巻に出てくる夢の浮橋に関連する古歌や紫式部集の最終歌などを紹介し、夢の浮橋の意味・紫式部の想いなどについて感想・意見交換をしました。

■感想など

・宇治十帖の終わり方が印象的
・薫の心情に寄せて読むとラストはこれでいいのかと思う
・前回はこの終わり方はないと思っていたが、今回はこれがいいと思った
・宇治十帖はあまり好きではない。終わり方も中途半端だと思う
・おわり方が完結した感じがしない
・源氏物語の終わらせ方が、特徴的で、もう一度読んでみればと言っているよう
・浮舟は意思のない人と思っていたが、自殺しようとしたのは自分の意思だった
・浮舟は薫・匂宮どちらかを選ばないことで自分の在り方を貫いた
・格の高い人もうらやむ美男の薫・匂宮二人との良い思い出で、浮舟は出家後生きていける
・初読では浮舟が不幸せに思えたが、再読では、浮舟は苦しんだけれどハラハラドキドキの恋を経験し、教養も身につけ歌を詠むようになり、成長して自分の生き方を選んでいて、幸せになったように思えた
・宇治十帖は登場人物の心情を細かく書いているが、これを紫式部一人で書いているのがすごい
・手習の巻がおもしろかった
・光源氏の物語も、浮舟の物語も受難→復活→再生となっている
・人からどう見られているか・ランク付けなどが重要視されるのが、この時代の生きづらさだと思う
・中君がいろんなことを思っているのが詳しく書かれていて興味深く、正編の女性たちも本当は裏でこのように考えていたのではないか
など

■登場人物400人以上、作中約80年にわたる長編小説『源氏物語』。10か月にわたって、読み進めてきました。まずは、大作を読み終えたという充実感でいっぱいです。源氏物語読書会としては、昨年に続き2巡目となり、再読の方や初読の方入り交じって、今年はネタバレありで進めてまいりました。
初読でどの訳者の本にするか試行錯誤された方、同じ訳者の本を再読して読み深められた方、別の訳者の本を読むことで訳本の違いを味わった方、原本に挑戦した方、今まで挑戦できなった訳者の本にチャレンジした方など、皆さんの訳本選びも様々で、そのお話をお聞きするのも読書会の楽しみの一つでした。 

『源氏物語』は単なるプレイボーイの男をめぐる恋愛物語ではなく、女性の生き方、各身分を背負う人間の生き様、権力を手に入れたい一族の物語や王権と政治、父と子・母と子の物語、人生の機微・はかなさなど、様々なテーマが盛り込まれています。また、当時の藤原氏の摂関政治という背景や宮廷生活・それを支える人々について知ることができる貴重な物語でもあります。何度読んでも新たな発見ができそうです。
「読書会を終えてもう一度読み直したい」「一人で読む以上に細かいところを楽しめた」という参加者のおっしゃる通り、いろんな方の興味深いご意見・ご感想を聞くことができたおかげで、『源氏物語』への興味は尽きません。

読書会で性別・年齢・環境の違う方たちのお話を聞くことによって、源氏物語の世界だけでなく、現在の私たちの生き方まで考えさせられたりすることもありました。

参加者の皆様、本当にどうもありがとうございました!!

【投稿者】NAOKO

REPORT

これまでの読書会