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これまでの読書会

第20回(12/7) 考える横浜読書会『春にして君を離れ』

■男性4名。女性13名、計17名での読書会でした。初参加は2名でした。

課題の本はアガサ・クリスティ―の『春にして君を離れ』。良き母であり良き妻であることを自任するジョーンが、娘夫婦の住むバグダットから英国に戻る際に砂漠で足止めされたことをきっかけに、自分の人生を振り返り恐ろしい事実に直面するという話です。

実は10月に開催を予定していたのですが、台風の影響で12月に延期になったという事情があり、しばらく時間をおいての読書会でした。課題本型の「考える横浜読書会」に初めて参加するという方もいらして、和気あいあいとした雰囲気の会になりました。横浜読書会はいつでも新しい方の参加をお待ちしております!「初めまして」大歓迎です!

【ご紹介いただいた本】

■参加者の感想

主人公であるジョーン・スカダモアという女性について、「こういう人いる!!」という声が非常に多く上がりました。そして「自分にもこういうところがあるかも」という声も。ジョーンと共に、思わず我が身を顧みた人が多かったようです。

・ジョーンは他人への評価が上から目線。でも自分もそういうところがあるかもしれない。

・自分の価値観を押し付けてくる人が、それに気づくけれども改めることはできなかった話。

・Aの状態からBの状態へ移行するけれど、またAの状態に戻ってしまっている。→A’くらいには変わったのではないか?

・なぜ彼女は気づく前の状態に戻ってしまったのか。気づいたあと、やっぱりそこから 変わることはできなかったのか。

ジョーンの夫であるロドニーについては評価が分かれました。彼は果たして「優しい夫」なのか?

・ロドニーは被害者ぶっているけど彼自身にも責任はある。

・この小説は若いころの夢をあきらめさせられたことに対するロドニーの復讐劇なのでは?

・子どもたちを味方につけて、ジョーンが孤立するように誘導していたのではないか。「ひとりぼっちのリトル・ジョーン」にしたのはロドニーだ。

・ロドニーはジョーンに対して本音でぶつかっていない。この夫婦は価値観をぶつけ合う必要があったのではないか。

・農場の夢を語ったとき、ジョーンに一刀両断されているのはかわいそうだが、客観的にみると 明らかにジョーンが正論を述べている。反論しようがない。

・ジョーンによって農場の夢をあきらめさせられたような態度をとっているが、あきらめたのはロドニー自身である。

・レスリー夫人なら農場の夢を一緒に叶えてくれたかもしれないが、暮らしは厳しかっただろう。それでも夫の夢を支えてくれる妻というのは世の中にはいるんだろうけど…→農場の夢を叶えたら、やっぱり弁護士にしておけばよかった、なぜ止めてくれなかったのかと思って生きるのかもしれない。

・ロドニーも過去の自分が交わした結婚という契約の範囲で、できうる限りのことをしている。そんなに嫌な奴でもない。

・ロドニーはジョーンをスケープゴートにして家族の絆を保っているように見える。→母親がわかってくれないのであれば子どもの側に寄り添う役を父親が担うしかない。

・ジョーンのことを最後まで守り続けるつもりなら、そこまで嫌な奴でもないのでは?

勇気を出すことの難しさ、あと一歩を踏み出すことの難しさは誰もが心当たりのあることで、弱者への視点の難しさについても多くの発言がありました。

・ジョーンが砂漠で一番会いたいと思ったのがブランチだったというのが印象的。

・最後にジョーンがロドニーに謝っていたら、その後どうなっただろうか。→ジョーンは「気づいてしまった」世界で生きていけるだろうか?→ロドニーも「気づいてしまったジョーン」と生きていけるだろうか?→二人とも、きっと戻るにはもう遅いのだろう。

・ジョーンもロドニーに、自分を騙し続けてくれることを期待している。→共依存している。こういう夫婦のほうが上手くいくものだ。

・無意識の優越感というのは誰にでもあるものだと思う。

お子さんがいる人/いない人など、様々な立場の人が集まった読書会でした。多くの場合、自分と近い立場の人物の視点で話を読むことが多いため、違う視点での感想を聞くことができるのは読書会の醍醐味のひとつだと思います。皆さん積極的に発言いただき、いろんな感想を聞くことができて興味深かったです。

ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

【投稿者】KINO

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