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特別企画4!SF読書会『ソラリス』

■参加者6名(男性5名、女性1名)でした。初参加は1名でした。

 

今回も書評家・冬木糸一さんをゲストにお呼びしてSF読書会を開催しました。課題の本は『ソラリス』です。SF作品の歴代ランキング1位に常時ランクインし、世界35か国語以上に翻訳されている『ソラリス』は、ポーランド文学の最高傑作と言われるだけに難易度も高く、内容を理解するのに難しい小説だと感じます。横浜読書会では完読を一番の目標にして募集をしました。当日は専門的な話は抜きにして読後の感想を参加者全員でゆるく語り合いました。

 

【あらすじ】

 

未来の宇宙空間に存在する不可思議な海で覆われた惑星「ソラリス」。主人公のケルヴィンはソラリスの調査を行うために地球からソラリス上空の宇宙ステーションへと向かう。

 

宇宙ステーションには数名の研究者達が待っているはずだったが、スナウトはコミュニケーションをとることが困難な状態で、ギバリアンは自殺していた。

 

ただならぬ気配に恐怖が走る中、いるはずのない黒人の女性を目撃したり、不可思議な物音を感じたり、不気味な現象がケルヴィンそのものをも襲う。そして驚くべきことに自殺したはずの恋人ハリーがケルヴィンの部屋に現れる。

 

【どんなジャンルの小説?】

 

『ソラリス』はSF小説と言われていますが、ホラー、サスペンス、ロマンス、冒険、哲学的・神学的な要素も含まれる物語です。多様性の高い小説としてSFというカテゴリーの枠にこだわることなく自由に読むのが一番だと感じます。

 

そして『ソラリス』は『白鯨』をモチーフにした小説です。物語の本筋には直接関係のない「ソラリス学」が語られるシーンや“海と戦う”という設定は『白鯨』からヒントを得ています。

 

【『ソラリス』の物語の核となるもの】

 

レムは人間中心主義や人間形態主義・アントロポモルフィズム(高度な知性を持つ生命体は人間と同じ形になる)という考えに提言したかったのではないでしょうか。形のない生命体であっても人間よりも高い知性を持っている可能性はあるのでは?とらえどころのない“海”が発するとらえどころのない現象によって人間が犯されていく、そんな物語を描きたかったのでは?そしてそこには、絶対的な他者と向き合うことへの大切さも感じます。人間が未知なるものと遭遇した時にどうすればよいのだろうか?そんな問いも本書には込められています。

 

【キーワード】

 

幽体F・お客さん(ミモイド)とは?本書を読んで是非確かめてください。

 

人間心理の深層に隠され、抑圧された記憶や欲望を探り出し、それを実体化するソラリス。人間以外の理性との接触の奇跡を味わって欲しいと思います。

 

 

【影響】

 

1972年はタルコフスキー監督・2002年にはソダーバーグ監督による映画化、2018年には藤倉大さんによるオペラ上演など、様々な文化人によってソラリス作品が発表されています。2017年にはNHKの「100分で名著」で紹介されました。

 

深層心理に訴えかける本作品は、自分の深い部分に刺さって抜けません。この傷をいやすのも本作品なのかも知れません。

 

参加してくださった皆様、ありがとうございました。

 

【投稿者】KURI

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