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これまでの読書会

第38回考える読書会 『海辺のカフカ』

■参加者13名(男性2名、女性11名)でした。

 

課題本は村上春樹『海辺のカフカ』。今回初めて村上春樹作品を読むという方が1名、他の方は村上春樹作品をいくつか読んでいる方が多く、ほとんどの作品を読んでいるという方もいらっしゃいました。

 

 

■『海辺のカフカ』は奇数章が僕の物語、偶数章がナカタさんの物語という構成になっています。皆さんにどちらの章が印象に残ったかをお聞きしました。

 

・僕の章……5人

・ナカタさんの章……7人

 

ナカタさんの章を挙げた理由として「ホシノさんが好き」「ホシノさんに癒される」などがあがり、ホシノさんファンが多かったです。「僕の章はリアリティがなく星野さんの章のほうがリアリティがある」「僕の章はモノクローム、ナカタさんの章は色鮮やか」などの比較もでました。

「僕の章は一人称、ナカタさんの章は三人称なのに対し、カラスと呼ばれる少年の章は二人称」という興味深いご指摘もありました。

 

■感想など

 

・初めて読んだがとても面白かった

・音楽、映画、古典文学など引用がうまく効果を上げている

・神話やクラシックなどいろんな要素がはいっていて面白い

・文学というより総合芸術のよう

・過去と未来、いろんな比喩・暗喩があり難しいけれど読み応えあった

・結末には納得した

・15歳の少年の鋭敏な感じがよく出ている

・自然と一体のなかで生まれた作品のように思う

・たくさんの暗喩(メタファー)があり難しい

・いろんなテーマを盛り込みすぎている

・村上春樹作品は意識高い系の人が読むものと思っていたが、とても面白く読めた

・ほかの作品も読みたくなった

・初めて読んだときは少年の成長物語として読んだが、再読の今回はゆるし・癒しの物語と感じた

・「大公トリオ」など作中に出てくる音楽を聴きながら読むとジーンとくる

・『海辺のカフカ』は15歳の少年のつくったファンタジーの世界の話なのではないか

 

■フリートークでは、さまざまな疑問がでました。

 

・セックスシーンなど性的な描写がこの作品に必要なのか

・女性の扱い方が一面的なのではないか

・なぜナカタさんは猫語を話せなくなったのか

・森は、死の世界か、生と死の世界の間か

・佐伯さんは僕の実の母だったのか

・なぜ佐伯さんやナカタさんの影が薄いのか

・カーネルサンダーズは何を意味するのか

・カラスと呼ばれる少年がいう「絵を眺める」「風の音を聞くんだ」の意味とは  など

 

出された疑問について、いろんな解釈などを自由にあげていただきました。

 

性的な描写については、必要ないと思うと同意される方がいる一方で、まったく気にならずに読んだという方もいらっしゃいました。「性=生」で必要な描写なのかもしれない、生きていないかもしれないナカタさんには性的なシーンはない、といったご意見もありました。

 

佐伯さんは僕の実の母かについては、佐伯さんは母なるもののメタファー、実母と断定してしまうとタブーの話になってしまうのでにおわせるだけにしている、などのご指摘がありました。

 

佐伯さんやナカタさんの影が薄い理由については、二人ともすでに実は生きていないという深い解釈も出ました。

 

「絵を眺める」の絵とは何かについては、思い出・記憶・時の流れ・歴史などがあがり、「風の音を聞くんだ」の風の音については、猫を殺して作る笛の音=死者の声と同じ意味ではという鋭い読み取りもいただきました。

 

■資料に引用したインタビュー記事で、村上春樹は「できるだけ簡単な言葉で、できるだけ深いものごとを、小説という形でしか語れないことを語る」と小説論を語っています。『海辺のカフカ』はまさにそのような小説だといえます。猫・兵隊さん・石・図書館・森などシンプルな言葉がちりばめられ、一言では表せない、小説でしか感じ取れない何かを物語っている作品だと、今回の読書会を通して感じました。

 

今回の課題本は、参加者の方が言われたように「神話や音楽などいろんな要素が入って」いて、「文学というより総合芸術」のような、「五感を総動員して」感じ取り「何度読んでも発見がある」奥深い本でした。皆さんの感想や解釈を聞いて、感性が刺激され、どんどんと想像が膨らんだ、そんなエキサイティングな読書会だったように思います。

 

ご参加いただいた皆さまどうもありがとうございました!!

【投稿者】NAOKO

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