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第21回(5/22)ミステリ横浜読書会『真っ白な嘘』

■参加者13名(男性6名、女性7名)でした。

第21回の課題の本はフレドリック・ブラウン(著)『真っ白な噓』になります。

■フレドリック・ブラウンは「エド&アム・ハンター」シリーズの第1作『シカゴ・ブルース』で1943年・第3回アメリカ探偵作家クラブ(MWA)最優秀処女長編賞を受賞しています。今回の読書会はその新訳(創元推理文庫)の解説を書かれた杉江松恋さんをゲストにお招きして読書会を開催しました。

本好きならば、一度は杉江さんの解説を読んでいるはずです。宮部みゆきさんや米澤穂信さん、東川篤哉さんなど多くの署名人作家の解説を書いています。私は『満願』の解説を読んで感動したことを今でも覚えています。

 

そんな杉江松恋さんから、今回はフレドリック・ブラウンに関するおすすめの作品や特徴、いくつかの疑問点をお話していただきました。

★杉江松恋さんのおすすめの作品

『現金を捜せ!』『3,1,2とノックせよ』『スポンサーから一言』『通り魔』『発狂した宇宙』『猫泥棒』など、一作品ごとに丁寧に解説しながらその本の魅力をお話してくださいました。

個人的には『火星人ゴーホーム』に興味を持ちました。ある日忽然として世界中に緑色の火星の小人が無数に出現して地球人を覗き見し嘲笑する話のようです。

★杉江松恋さんのお好きな作品

一般的にはSF作品の評価が高いようですが、杉江さんは『シカゴブルース』のようなシリーズ化していく中での主人公の成長譚のような物語がお好きなようです。そこには登場人物たちに向ける暖かいまなざしが存在します。思いやりのある視線で静かに細やかに描写するのです。

★杉江松恋さんが語る作品の特徴

『手斧が首を切りに来た』を例に挙げてギミックミステリーにつて詳しく解説していただきました。ギミックミステリーとは仕掛け・趣向に満ちた推理小説のことを指します。ちなみにローレンス・トリート(著)『ミステリーの書き方』はミステリ小説を語る上では大変参考になるそうです。

★疑問その1:旅巡業カーニバルで働いた経験があるのか?

フレドリック・ブラウンの経歴(職業)について”旅巡業カーニバルも経験してる”との記載がちらほら見かけます。実際のところは「職業としての経験はない」そうです。フレドリック・ブラウンの奥様が書いた書籍から、生前のフレドリック・ブラウンの生活が書き綴られており証明されました。

★疑問その2:戦後に短編小説の執筆量が減ったのは何故か?

戦後に短編小説の執筆量が減ったのは、戦争という時代背景が大きく影響しているのかと気になりましたが、実際は「長編小説に力を入れて書き始めたから(長編小説家として起動に乗りはじめて忙しくなったから)」だそうです。

■参加者全員で『真っ白な噓』の中でお気に入りの作品をあげてみました。

「世界史上最も偉大な死」が一番人気でした。マーニーの四文字の一語で完結された詩とはいったい何だったのか様々な意見が出ました。「メリーゴーランド」「叫べ、沈黙よ」「危ないやつら」「後ろを見るな」「真っ白な噓」も複数の方の心に残ったようです。

他、本書の感想として、レンがこびとを背中におぶって異常な速さで雪原を突き進むシーンが頭から離れないと言って盛り上がった「笑う肉屋」、死んだと思ったライリーがひょっこり現れるギャグセンスが冴える「ライリーの死」など、奇抜な発想や全体のムード、ディテールのうまさはフレドリック・ブラウンならではです。魅力たっぷりの作品ばかりでした。

■フレドリック・ブラウン一色の読書会でした。ご参加いただいた皆様、本当に楽しかったです。ありがとうございます。

最後に…

喘息に苦しんでいたフレドリック・ブラウンが肺気腫で病院のベットで亡くなったあと、家族がフレドリック・ブラウンの机から発見した一枚のメモには、こう書いてあったそうです。

” No flowers, No funeral, No fuss ”

(花たむけるな、葬儀屋頼むな、騒ぎ立てるな)

短い文で、頭韻を踏んだ3つのセンテンス。フレドリック・ブラウンは最後までフレドリック・ブラウンだったのです。

【投稿者】KURI

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