REPORT
これまでの読書会
第57回考える横浜読書会 『ティファニーで朝食を』
■参加者14名(男性5名、女性8名)でした。
トルーマン・カポーティの中編『ティファニーで朝食を』。作家志望の僕が、同じアパートに住む自由奔放なホリーという女性との短い期間の交流を回想として語るというスタイルの小説。オードリー・ヘプバーン主演で映画化されタイトルは有名ですが、映画は観たけれど原作を読むのは今回初めてという方も多かったです。
■解説では、「トルーマン・カポーティ」「作品誕生の背景」などについて簡単に説明しました。
■参加者の皆さんに、印象に残ったシーンをお聞きしました。
・ホリーが国外へ逃げるとき、一緒に暮らしていた猫を放し、その後思い直して捜しまわるシーン
・清潔なレースのカーテンのかかった窓辺にホリーの猫が飼い猫となっていたのを僕が見つけたシーン
・入院中のホリーが男からの手紙を読むときに、化粧をして口紅をつけて読むシーン
・兄の死亡の知らせを受けホリーが荒れ、ツリーなど部屋中のものが壊れ散乱しているところ
・ホリーが鳥かごを僕にプレゼントして、「何があってもこの中に生き物は入れないで」というところ
など
「私たちはお互い誰のものでもない、独立した人格だ」という名前も付けていない猫との別れのシーンを挙げた方が多かったです。ホリーの分身でもある猫が、幸せなお家に飼われているシーンは、ホリーが結婚して幸せに暮らしていることを暗示するのか。誰のものにもならないというホリーの自由な生き方の挫折を示すものなのか。それとも、アフリカで何ものにも縛られない生き方をしているのか。実際に、生きているのか。……様々な解釈が可能です。
■作中に何度か出てくる「いやな赤」についてや、なぜ他のブランドではなく「ティファニー」だったのかなどについても、様々な意見が出され、読書会ならではの深みある読み取りになりました。
「読書会を通してホリーの人物像が深まった」という参加者の感想が多くあがりましたが、自由奔放な女性ホリーの可愛さ・幼さ・哀しみ・たくましさ・繊細さなど様々な側面が見えてきて、そんな彼女を生みだしたものは何か、彼女の生き方についてなど、とても考えさせられます。
ホリーのような女性を男性としてどう思うか、参加者の男性にお聞きしました。ご自分の恋愛体験を交えてのお話はとても興味深く説得力があり、盛り上がりました。
■その他の感想
・ホリーがサングラスをかけたまま図書館で本を読み続けているところが印象的
・ホリーは、自由でつかみどころがなくとても魅力的
・ホリーは変わらないものにあこがれている
・ニューヨークの夢と現実が交錯している
・ホリーをとりまいているおじさんたちがライバルのはずなのに、みんなそこそこ仲良くなって酒を飲んでいるところが面白い
・村上春樹の訳がよくて文章がすっと入ってくる
・村上春樹の作品を読んでいるような気がする。村上春樹訳だからかそれとも村上春樹がカポーティの影響を受けているからか。
・僕とホリーは似ている。僕=ホリーであるのでは?
・映画との違いを比べながら読み、映画のよさ・小説のよさを味わった
・僕がホリーを久しぶりに思い出したように、普段は思い出さない人なのに、あるきっかけで鮮烈に思い出すことがあるなと思った
・フツーの男性が破天荒な女の子の行動に巻き込まれていくという、ライトノベルのような展開でいまどきっぽい
・キラキラな小説と思って読んだら、そうでなくて意外だった
・作品と著者の人生は別というけれど、著者のカポーティとホリーが重なり胸いっぱいになる
・心が揺さぶられる小説だった
・良質な文学を読んだ
など
■「人生で何度も読み直したくなる作品になった」と参加者がおっしゃっいまいたが、『ティファニーで朝食を』は想像以上に深い作品で、メタファーがちりばめられ何度も読んで解釈を楽しめる作品であることを、読書会を通して気づかされました。ありがたいことです。
ご参加くださった皆様、本当にどうもありがとうございました!!
【投稿者】NAOKO