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第45回考える読書会 『源氏物語』第5回(蛍~藤裏葉)

■参加者8名(男性3名、女性5名)でした。

 

『源氏物語』を読み進めていく企画の第5回目(全10回)。訳者は決めずにお好きなものを読んできていただいています。今回から瀬戸内寂聴訳から角田光代訳に変えたという方もいらっしゃいました。

 

 

■今回の範囲は、前回の玉鬘の巻からの「玉鬘十帖」の続きとなります。

予想外の男性と結婚することになった玉鬘。彼女の人生、結婚は幸せだったといえるのか、皆さんにお聞きしました。

 

多くの方が、玉鬘は幸せだったと思われていました。その理由として

・結婚相手の髭黒の大将は実力がある

・髭黒の大将が愛してくれている

・女は愛するより愛されて結婚した方が幸せだから

・結果的に生活が安定する結婚だから

・玉鬘にとって玉の輿だし、北の方よりも愛されている

などがあげられました。

 

一方で、結果的に安定した生活は得られたけれども、玉鬘自身が幸せに思っていないなどの理由で、ハッピーエンドとはいえないというご意見もありました。

 

 

■配布資料で「紫の上系と玉鬘系に分けられる第一部の構成」「平安時代の香」「惟光一家の出世」などについて簡単に説明しながら、各巻ごとに感想などをお聞きしました。

 

 

■紫の上系の話は、きらきらの光源氏のサクセスストーリー。一方の玉鬘系の話は、コミカルなところもある光源氏の恋愛失敗談。特に、今回の範囲の玉鬘十帖は、養父なのに義理の娘に言い寄っていく、何とも受け入れがたい中年期の光源氏が描かれます。

参加者の方が言われた「生理的に無理」で「光源氏の印象が悪くなる」「光源氏が普通の人になった」といったエピソードが多いのが玉鬘系です。ただ、玉鬘系の話があることで、光源氏やその周辺の人物造形が深くなり、物語にも深みが出てくることは確かです。

 

六条院の様子も、紫の上系ではあまり詳しく書かれていません。玉鬘系で、新年・舟楽・納涼・篝火の中での遊楽など六条院での華やかな行事と人々の様子が描かれ、当時の貴族の生活がリアルに浮かび上がります。

 

「最初の想定では玉鬘十帖はなかっただろう」というご意見が出ましたが、紫式部はどのような意図・経緯で玉鬘系の話を書いたのか、興味深いところです。

 

 

■香については、「平安時代は主に女性が香の調合をしていたらしい」というお話を、香の講座を受講されたという参加者の方からいただきました。だとすると、光源氏が香の調合に熱心で詳しいのは、何を意味するのでしょうか。深く考えてみるのも面白そうです。

 

 

■「髭黒大将の北の方」や「近江の君」「内大臣(頭中将)」「夕霧」「雲居の雁」についても、様々なご意見・ご感想がいろいろ出て、話が盛り上りました。

 

・北の方やその子真木柱がかわいそう

・北の方の気性はひどく、髭黒の大将がかわいそう

・近江の君がパワフルで応援したくなる

・嘲笑されている近江の君は、逆に貴族社会の常識をあざ笑っているのではないか

・夕霧が六条院で垣間見する所がいい

・夕霧が六条院や大宮のところにまめに顔を出すところが孝行息子で好感度上る

・内大臣が、夕霧を招待して和解しようとするところや、雲居の雁への後朝の文を読んでしまうところがいじらしい

・子供の認知について、今と違ってとてもアバウト

・近江の君の母はどんな身分の人だったのか

 

特に、近江の君と内大臣の話で盛り上がり、「内大臣はなぜ自分の子どもだとわかるのか」「自分の子だと認知して引き取ってしまうのは安易すぎたのでは」「自分が期待していたほどの娘でないとわかってからの内大臣の扱いがひどい」など、内大臣の大雑把な性格などについても話が深まりました。紫の上や玉鬘を引き取った光源氏との差を、紫式部は見せつけているようにも思われます。

 

また、髭黒の大将の北の方についていろいろな感想が出されました。「北の方は黙って玉鬘を受け容れたらよかったのか」というご意見に、「黙って受け入れるのが紫の上」という話になり、「北の方」と「紫の上」、どちらも式部卿の宮の娘である二人の対比が印象的でした。

ある参加者の方が注目されていましたが「近江の君と玉鬘」「紫の上と明石の君」など、人物を対比で考えて読むと、いろいろな発見があります。

 

■ご参加くださった皆様、本当にどうもありがとうございました!!

次回もどうぞよろしくお願いいたします。

6回目からのご参加、大歓迎です。お待ちしています!

【投稿者】KURI

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