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第44回考える読書会 『源氏物語』第4回(薄雲~胡蝶)

■参加者9名(男性4名、女性5名)でした。

 

『源氏物語』を読み進めていく企画の第4回目(全10回)。今回から参加の方もいらっしゃいました。訳者は決めずにお好きなものを読んできていただいています。

 

 

■今回の範囲の薄雲の巻では、藤壺の女院が崩御します。桐壺の巻で、「光るの君」「輝く日の宮」として登場した美貌の二人、光源氏と藤壺。父そして帝の妃である藤壺への許されざる光源氏の恋。果たして、藤壺は光源氏に恋していたのか。二人の関係は、本当の恋だったのか。光源氏と藤壺の関係について、皆さんにお聞きしました。

 

・魂同士がつながっているソウルメイト

・光源氏にとっては本当の恋。ただし藤壺にとっては恋かどうかわからない

・二人の関係は恋だけれど、お互いに利用し合っているところがある

・光源氏が藤壺に従い、利用されている

・光源氏にとって藤壺は母代わり

・光源氏は実母と重ねて想いも募らせているが、藤壺はそうでもないような気がする

・光源氏と藤壺は20年以上の長きにわたる恋

・光源氏にとって初恋で忘れられない恋

・二人とも、許されない恋だからこそ想いは強くなる

など

 

藤壺が光源氏をどう思っていたかで、ご意見が分かれました。光源氏ほど恋に身を焦がしていないとする意見や光源氏を利用していた面が見受けられるという読み取りなど、物語後半の母となった藤壺の強さ・したたかさが目についたようです。物語の中で、藤壺の心情はあまり語られず、だからこそ、本当は光源氏への強い思いを秘め苦しんでいたのかもしれません。

 

 

■女房・召人・六条院についてなど、図版資料や事前にお配りした資料を使って簡単な解説をして、各巻ごとに感想などをお聞きしました。

 

六条院は贅を尽くした風雅な邸宅というだけでなく、易経などを取り入れて女人の配置した設計になっていて、紫式部が博識な作家であることに驚かされます。

また、紫式部の物語細部の作り込みは見事で、読めば読むほどいろいろな発見があります。六条院の造営にも、いろいろな仕掛けを紫式部はかけています。六条御息所邸の跡地に造営し、六条御息所の娘を迎えて立后させ光源氏の権勢をさらに高めたり、竜王が住むという四方四季殿をモデルにした六条院に、竜王と関連して語られた明石の君を迎えさたり、巻をまたいで伏線を敷いています。こうした、伏線は、再読・読書会だからこそ気づくことも多いです。

 

 

■感想など

 

・父なのに玉鬘に言い寄るどうしようもないところなど、今までと違う光源氏がでてきた

・胡蝶の巻の光源氏は生理的に無理

・玉鬘の巻が物語としてとても面白かった

・光源氏は、市場で見落とされているものを見出すのがうまい。そうしたものを集めたのが六条院

・恋愛の当事者から玉鬘などを育てる・飼育するといったように、光源氏の行動が変わってきた

・藤壺の崩御・六条院の完成は物語のターニングポイント

・引き裂かれた夕霧と雲居の雁の関係は、男女の関係までいっていたのだろうか

・朝顔の巻がほっとした

・光源氏が六条院を完成させ権勢を誇っている様子に、この裏で光源氏の弟・八の宮が不遇の生活を送っていると考えると、運命の皮肉・いたずら・悲哀を感じる

・明石の君があまりにも自分を卑下してへりくだっているのが気になるが、それがある意味、彼女の強みでパワーなのかもしれない

・光源氏は、朝顔の君をはじめ、上の品の女性とはうまくいかない

など

 

 

■紫の上が明石の姫君に授乳する描写について、なぜ紫式部はそこまで書き、子どものいない紫の上のコンプレックスをあえて見せるのかについて疑問が出され、考えさせられました。

 

今回の範囲では、紫の上の翳り・せつなさが見え始めたように思います。紫の上は、光源氏の寵愛を受け続け、六条院では最高の部屋を用意され厚遇されています。しかし、六条院が完成後の新年の日、光源氏がともに一夜を過ごしたのは明石の君。また、朝顔の君への光源氏の思慕が再燃しますが、朝顔の君は決してなびかず、その模様を傍で見ている紫の上。高位の朝顔の君や、光源氏の子を産んだ明石の君に嫉妬する紫の上の描写によって、彼女の拠り所のなさが浮き彫りになります。

 

今後、紫の上の立場・心情はどのようになっていくのか、皆さんが紫の上と光源氏の関係をどのように解釈されるのか、とても楽しみです。

 

 

■ご参加くださった皆様、本当にどうもありがとうございました!!

次回もどうぞよろしくお願いいたします。

また、5回目からのご参加、大歓迎です。お待ちしています!

【投稿者】NAOKO

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