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これまでの読書会
第69回考える横浜読書会KURIBOOKS『雪国』
考える読書会KURIBOOKSのファシリテーターを担当していますnaokoです。
よろしくお願いします。
第69回考える読書会 『雪国』
■川端康成の『雪国』。
参加者14名(男性5名、女性9名)
■「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」の書き出しで有名な『雪国』。ノーベル文学賞受賞作家・川端康成の代表作ですが、意外にも「実は読んだことがない」「川端作品を初めて読んだ」という方が多かったです。
そんな中、『雪国』は小説を読むきっかけとなった本で10代後半から書き写しにはまったという20代男性がいらっしゃり、書き写しの効用など貴重なお話も伺えました。
■川端の年譜や『雪国』完成までのエピソードなど、簡単な解説のあと、フリートークに入りました。
■『雪国』は、妻子ある男性が雪国にいる駒子という若い女性のもとに通う話で、現代の私たちからみると、ちゃんと働きもせず親の遺産で暮らすひどい男の不倫話の印象がぬぐえません。
初めの感想では、
・島村が嫌い
・島村・駒子・葉子3人ともに共感できない
・読みづらかった
という感想を挙げた方が多かったのです。
ところが、読書会が進んでいくと、
・長いトンネルを抜けて雪国という世界に入っていく意味
・倫理的な価値判断抜きで登場人物の人間関係を通して見えてくるもの
など、登場人物の好き嫌いを超えた、新たな視点でのディスカッションにもなりました。
また、「清潔」「純粋」「徒労」「蝶」「蚕」「蛾」「繭蔵」などキーワードとなる言葉について、皆さんの様々な解釈・感想がとても興味深く、なるほどと思ったり新しい発見があったりでした。
ほかに、『雪国』が細部にこだわって作り上げられていることに、たくさん気づくことができました。例えば、冒頭の一文に続く「夜の底が白くなった」という一文。「夜の底」という言葉選び一つとっても、完璧を求め続けた川端康成の感性に、圧倒されます。
■個人的に特に印象的だったのは、
・雪国に閉ざされた舞台での島村・駒子らの話はすべて仕掛け、美しさを表すためのもの
・小説の終わり方は、夢から覚め現実が落ちてくる感じ
・トンネルを抜けたシーンで始まり繭蔵での映写会の火事のシーンで終わる一つの映像のような小説
という参加者の方のご意見でした。
■『雪国』は現代の倫理観からは、とても共感しにくい小説です。けれども「訴えたいことがある小説、結論を出したい小説」ではないのではないかという視点で、皆さんのご意見を聞いていると、川端康成が『雪国』で描きたかった世界が、少しずつ見えてきたように思います。
人間の孤独と愛、現実と夢、そうしたアンバランスで一瞬にして崩壊してしまう、つかの間の世界を、まるで鏡に映る映像のように描きたかったのかもしれません。
■本当にあっという間の2時間でした。
この日、読書会を終えようとしたとき、「雪!」と参加者の方から声が。会場のカフェの外を見ると、横浜の暗くなった1月の空から、雪がちらちらと降っていました。川端康成も読書会に参加してくださった……そんな奇跡のような『雪国』読書会でした。
ご参加くださった皆様、本当にどうもありがとうございました!!
【投稿者】naoko