REPORT
これまでの読書会
第65回考える読書会KURIBOOKS『春琴抄』
■谷崎潤一郎の『春琴抄』。
参加者17名(男性7名、女性10名)
いつもよりやや多めの人数でした。読書会初参加の方も数名。
■谷崎作品を初めて読んですっかり谷崎文学に魅せられその他の作品をいくつか読んで参加された方。
谷崎潤一郎作品は自分の人生を変えたという過去を持つ方。
普段はミステリーを多く読んでいて、純文学を読むのは初めてという方。
久しぶりに文学作品というものを読んだという方。いろんな方が集まっての読書会となりました。
■最初の感想では、
・句読点がないので読みにくい
・事件が起きず、楽しみ方がわからない
・佐助・春琴ともに好きになれなかった
という感想があがった一方で、
・句読点がないのは気にならなかった
・文体は読みやすく、詩を読んでいるよう
・谷崎は日本語の描写能力がすごい
・硬質な文体
と真逆の感想もありの読書会スタートでした。
■谷崎の年譜や『春琴抄』に関連するエピソードなどの簡単な解説のあと、ディスカッションに入りました。
おもなディスカッションの内容は、
・句読点・改行がないことの意義について
・作品が三人称や一人称ではなく、春琴の評伝からの引用と佐助・春琴に仕えた女性への取材による人物伝という形をとっている理
・ひばりなどの鳥を飼い愛でているエピソードの意味すること
・春琴・佐助の関係性と谷崎の芸術・生活の関係性の相似について
・マゾヒズムから読み解く佐助と春琴の関係性について
・春琴はいつから佐助に恋愛感情を持ったか
・春琴は本当は佐助と結婚したかったのか
などなど、自分一人の読書では思いもつかない方向へ皆さんのご意見・感想が繰り広げられ、
『春琴抄』以外にも谷崎作品を読み込んだ方などからの知識も披露され、
意表を突く読み取りができたり、新しい発見があったりの連続でした。
■あっという間の2時間でしたが、多くの貴重なご感想・ご意見を聞くことができました。
個人的には、
「盲目であることは不自由なのではなく、実は眼が見えることの方が不自由ということを描いている」
「佐助が失明し、春琴の美しさの記憶をそのまま維持するのでなく記憶を強化させている」
というご意見が特に心に残っています。
■「好きな女性の顔に傷がついたから自分の目を潰した男の話」と参加者の方がおっしゃった通り、
ただそれだけの話に17名の読書人が様々な感想を述べ解釈されることに驚き興奮しました。
『春琴抄』は「いろんな角度から読め、そういう読み方をさせる文学作品」であり、
「谷崎の目指した芸術作品」なのだと、読書会を通して気づかされました。ありがたいことです。
ちなみに、読書会後の懇親会2次会も『春琴抄』話で盛り上がるほど、
この日は『春琴抄』の魅力に取りつかれた日でした。
ご参加くださった皆様、本当にどうもありがとうございました!!
【投稿者】naoko