REPORT
これまでの読書会
第56回考える読書会『A・ウェイリー版 源氏物語』第2回(末摘花~花散里)
■参加者12名(男性5名、女性7名)
『A・ウェイリー版 源氏物語』(毬矢まりえ・森山恵姉妹・訳、左右社)を全10回で読み進める企画の第2回目は、末摘花~花散里の巻まで。今回から参加で、源氏物語初めての方もいらっしゃいました。
■解説では、「紫式部の略歴」「平安時代の後宮」などについて、簡単に説明しました。
■今回の範囲で一番印象に残った巻を皆さんにお聞きしたところ、多くの方が「賢木」の巻を挙げられました。その理由は以下の通りです。
・野宮の別れが美しい
・ロクジョウとゲンジの別れのシーンがよく描かれている
・ボリュームがあって読みごたえがある
・野宮でのゲンジとロクジョウの一夜の描写が艶っぽく、男と女が別れるのはとても難しいとしみじみ思った
・「ついに夜は果て、二人の喜びの色にも似た暁が訪れました」の記述のあとの別れの歌のやり取りが切ない。
など
「紅葉賀」の巻の青海波を舞うゲンジとそれを見るフジツボのシーンを印象だったと挙げた方もいらっしゃいました。二人だけは見る景色が違っていただろうと、二人の秘められた想いに胸が締め付けられます。桐壺帝がフジツボにゲンジの舞の感想をしきりに聞く場面について、桐壺帝は息子ゲンジと妻フジツボの関係を知っていたのだろうかという話にもなりました。また、フジツボのゲンジへ寄せる思いの深さも、人によって様々なとらえ方があり、興味深かったです。
■以下皆さんのご感想・ご意見の一部です。
・アオイの実家でアオイの兄弟たちと突然ささやかなコンサートなど、音楽と詩にあふれた文化的な生活が際立つ
・エキゾチックでキラキラ感満載
・最初はカタカナ表記が混じるなど違和感あったが、読み進めるうちにイメージしやすくなった
・カタカタが入った訳は笑えて楽しめる
・色好みの源典侍が自分と同年代だが女として現役ですごい
・話がダイナミックで楽しかった
・桐壺帝の政権構想が崩壊した
・表現がとても魅力的
・「その美しい色も夜の闇に広げたシルクのように、徒になってしまいますから」という表現がきれい
・和歌の訳がロマンチック
・和歌の鈴鹿川をスズカ川とせず「スズカ・ストリーム」としているのが印象的
・「あなたが沈黙の誓いを立てているとしても、その沈黙に幾度でも挑みましょう……」という和歌の訳が素敵
・人物造形やストーリーがすっきりしている
・生霊を小道具として使っている紫式部がすごい
・1000年前にここまで心理描写を描いていて紫式部はすごい
など
他の訳本と比較しての印象の違いの感想もでました。
・ウェイリー訳で源氏物語を味わえるようになった
・一昨年、昨年読んだ訳本よりも色っぽい印象
・葵の上の存在が今までの訳より増し、とてもゲンジのことを想っているように感じた
・葵の上は気が強いイメージだったが、ウェイリー訳ではかわいそうな女性だと思った
・ウェイリーはオボロヅキヨに思い入れがないのではないか
・従来の末摘花の強烈な印象が、ウェイリー版だと薄い感じがした
など
■今回の範囲は、若きゲンジに関係する多くの女性が登場します。
色恋の世界へ突如無理やり入ってしまった無垢な少女ムラサキ。皇族の血を引きながら落ちぶれ平安時代の女性の魅力・能力を全く持っていない末摘花。気高く愛の表現を知らずにゲンジの子をなし亡くなった正妻アオイ。元皇太子の妻という高貴な身分にありながらゲンジという若い貴族との情事に溺れ、嫉妬の苦しみから抜け出せなくなるロクジョウ。若き貴公子ゲンジの魅力に突き進むオボロヅキヨ。義理の息子の求愛に苦しめられ禁断の愛を背負うフジツボ。
どの女性に焦点を当てても、話が尽きません。『源氏物語』、奥深いです。
■第2回源氏物語読書会は、前回の『A・ウェイリー版源氏物語』の衝撃・斬新さについての感想の共有から、ウェイリー版源氏物語の世界に没入してのディスカッションの時間が増えました。外国の言葉と文化を通して見えてくる日本文化を超えた『源氏物語』の新たな世界と魅力を実感します。これから、さらに皆さんと一緒にその世界に深く入っていくのが楽しみです。
ご参加くださった皆様、どうもありがとうございました!!
次回もどうぞよろしくお願いいたします。
また、3回目以降からご参加くださる方、お待ちいたしております!
【投稿者】NAOKO