第11回(2/3)考える横浜読書会『蠅の王』

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■参加者は男性9名、女性6名でした。

***おそらく人間じゃない(笑)と思います。半端ない読書量と教養をお持ちの異星人KINOさんの紹介文です。一緒に考える読書会を盛り上げてくれているKINOさんありがとうございます。***

 

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ノーベル賞作家ゴールディングの代表作、『蠅の王』が今回の課題本でした。
独特の読後感と随所にちりばめられた象徴的なアイテムが特徴的な長編小説です。

■著者経歴

1911年、イングランド南西端のコーンウォール州に生まれる。父親は科学教師をしていた。貧しい家だったが、オックスフォード大に進学。はじめは自然科学専攻だったが、のちに英文学に転籍。大学卒業後は父と同じく公立学校の教師となる。第二次世界大戦では海軍に入り、ノルマンディー上陸作戦にも参加。ナチスのホロコーストやアメリカの原爆に衝撃を受ける。戦争が終わると教職に戻り、1954年に『蠅の王』を発表。1980年にブッカー賞、1983年にノーベル文学賞を受賞。1993年没。

■『蠅の王』あらすじ

不時着した飛行機で生き残ったイギリスの少年たち。楽園のような南の島で大人のいない自由な生活を謳歌するが、夜の闇や正体不明の<獣>への恐怖が忍び寄り、少年たちは次第に分裂していく。

■参加者の感想

※以下、作品の結末に触れていますのでご注意ください。
※登場人物や単語の表記は黒原訳に倣っています。

登場人物についてはさまざまな意見が飛び交いました。

・ラルフは未来志向で、ジャックは現実志向。
 どちらもそれぞれゴールが異なるので、分裂は不可避。
・ラルフもジャックもそれぞれ立場が違うだけで、どちらが悪くどちらが正しいというものでもない。
ジャックは狩りに夢中になり自分の王国を作り上げるところがガキ大将のようだけど、悪い奴ではない。
・みんなが恐怖を見ないふりしようとするなか、サイモンは知ろうとしたところが、他の子たちと違う。
・ジャックは出世するタイプ
・ロジャーは一番危ない奴
・ラルフがピギーの賢さにもう少し早く気づいていたら…

それぞれ個性的な登場人物たちですが、ジャックの「部族」に入って原始的衝動に駆られると、彼らは名前を呼ばれなくなる点についても話がでました。

・顔にペイントをして自分が自分じゃなくなる感覚を得ると、個々の人物ではなく、名前のない「部族」のひとりになる
・原始的な欲求が高まり、踊ったり歌ったりドーパミンが出ている状態になると、誰が誰だか区別されなくなる
・最後の場面でジャックは容貌だけで表現され、名前を呼ばれなくなっている
・個体名が消えることで敵になる。敵方に名前がなくなるのは、戦争と同じ心理状態ではないか

また作品の随所にちりばめられたアイテムやキーワードの解釈でも盛り上がりました。

・煙-希望-ラルフ、豚-欲望-ジャック、というように、象徴的なアイテムがそれぞれの登場人物に対応しているのではないか。
・蠅の王はジャックの原始的な欲望なのか?
-> すべての少年(そして読者)の心にある闇ではないか。
・近視の眼鏡で火はおこせない。
 -> ピギーは実は見えていたけど見えないふりをしていた?
 -> 単純なミスではないか
・「イギリスの少年」とわざわざ限定することで西洋批判をしていると思う

また参加者全員に「結末についてどう思うか?」を聞いてみたところ、圧倒的な多さで「すっきりしないとの感想を頂きました。

・最終的に誰が助かったのかがわからないのが怖い
・助かるまでの期間がどれくらいだったのかもわからない
・取ってつけたような終わり方のように感じた
・後味の悪さがいい
・唐突にアクション映画風になったので戸惑った
・あえてすっきりしない終わり方にして、読者に結末を委ねている
・「大人」がくるとみんな我に返ったようになった。少年たちはずっと長い夢を見ていたような状態で、「大人」の登場で目が覚めたのではないか?サイモンは少年たちの中で唯一ずっと「目が覚めていた状態」だったのではないか?
・ラルフがずっとこだわっていた「助けを呼ぶ煙」が、自分を殺そうとする火の煙でようやく届いたというのは皮肉な結果。

上記以外にもさまざまな感想を聞くことができ、充実した時間となりました。
参加者の皆様、ありがとうございました。

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