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これまでの読書会

※(12/5)『本を読む人だけが手にするもの』藤原和博さん

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『本を読む人だけが手にするもの』を手で触れてみる。

適度な厚さと重みは手に馴染み、ふわりとした手触りを感じる。表紙のタイトルは上品さを感じるサイズとフォントで仕上げていて、背表紙も主張が少なく本棚のどこでも収まりが良さそうだ。

ページをめくり、目を通すと、各章は程よく刻まれ、少しの空いた時間でも切りよく読み進められる。すっきりとした文章は無駄をそぎ落として記されており、ポイントとなる部分を図解で解りやすくまとめられているように思う。

著者は「藤原和博」さん。過去に義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長先生になられた方と言えばおわかりになるだろうか。書籍もたくさん出版しており『35歳の教科書』で知られる人生の教科書シリーズなど累計123万部を超える。

そんな著者のお薦めの本が巻末に余すことなく紹介されていて、高揚感が止まらなくなった。

 

これが、本書を初めて手にした時のインスピレーション。人の出会いは第一印象が大切というが、本も同じでは?と思う。

 

本書のお蔭でご縁が生まれ、株式会社日本実業出版社の川上さんと桑田さんにお会いする運びとなった。

株式会社日本実業出版社は1950年創業、大阪に本社を構える出版社だ。現在東京を中心に活動しており、主にビジネス書や一般書を多く発行している。わかる事典シリーズや学術的な書籍はロングセラーとして人気が高く、長く読み継がれる書籍を残していきたいと考える「職人魂の香りが漂う会社」と言う印象を持った。待ち合わせは、互いに座って待てるようにとカフェにしたが、お二人は秋の夜風が肌寒さを感じるお店の前で直立不動のまま佇んでいた。

礼儀正しくまじめなお二人に、早速『本を読む人だけが手にするもの』のお話をお伺いしてみよう。

 

佐藤:今日は宜しくお願いいたします。『本を読む人だけが手にするもの』の表紙は寄藤文平さんがイラストを描かれたのですね。人気急上昇の彼の絵は私も大好きです。

川上さん:解りやすく「絵だからセーフ」と言うぎりぎりの表現が上手い方です。寄藤さんはフリーペーパー『R25』の表紙のイラストを担当していたこともあり、若いビジネスマンに人気があります。本書も素敵なイラストに仕上がりました。

佐藤:となると、この本の対象は若いビジネスマンでしょうか。

桑田さん:巻末には子どもといっしょに読みたい本を紹介していますので、小中学生から高校生のお子さんを持つ親御さんも一緒に楽しめると思います。また、時間に余裕が生まれるミドルエイジの方にも馴染みやすい本かと思います。著者自身のエピソードをたくさん載せていますから、同じ時代を生きた方には腑に落ちる話がたくさん盛り込まれているのではないでしょうか。年齢、性別に関係なく、幅広い層に受け入れてもらえると思います。

佐藤:本書は「なぜ本を読むといいのか」といった読書のすすめが一冊になった本ですね。

川上さん:はい、現代社会のラフスタイルに沿った読書のすすめを提案していると思います。今後の成熟社会は本を読む習慣のある人とない人に二分される階層社会になり、本を読まない人は生き残れないとも書いています。情報処理力・ジグソーパズル型思考から情報編集力・レゴ型思考への転換が必要で、そのためには読書が最適と述べています。そして著者は別の著書『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』にも書いていましたが、携帯電話のゲームやパチンコでは時間管理や教養は身につかない、との考えです。情報編集力や時間管理能力、教養は21世紀型の成熟社会が象徴する「個人で決断する時代」には必要不可欠なスキルでしょう。

佐藤:そうですね。意外なことに著者は小さい頃は、本を読まない子だったと書いています。その後の人生で良き本との出会いがたくさんあり、実体験と絡み合って「本を読む習慣」が身についたようです。

桑田さん:私は『本を読む人だけが手にするもの』を読み終えてあらためて純文学が読みたくなりました。社会人として働いているとついつい自分の考えをおざなりにしたまま、日々が過ぎてしまいます。そうした基本的な人の感情、「悩み、怒り、憤り、喜び」など物語の登場人物と共に感じたいと思います。学生時代に読まずに終わった名著にもう一度チャレンジしようかなと思っています。

佐藤:その名著を読み終えたら、感想を聞かせてください。読書会へのご参加をお待ちしております。(笑)

川上さん:佐藤さんが主宰されている読書会はまさに本書が言っている「他人の脳のかけら」を自分につなげる行為ですよね。参加者の方たちの脳が作家の考える思考回路と繋がり、様々な知識や思考が蓄積され多様性が生まれます。あらゆるシーンで未来を予測するのに考察力が磨かれ、知恵として生きるでしょう。

佐藤:ありがとうございます。読書会に参加している方たちにもぜひ読んで欲しい一冊です。そして「かけら」と言う表現は、的を射る言葉だなと思いました。私は幼少期に空き地で拾ったガラスのかけらをポケットに忍ばせて持ち帰り、お菓子箱に入れて集めていました。きらきらして綺麗だったのです。今考えると割れたガラス収集なんて危険な行為ですし、変な子供ですが、当時は楽しかったことを覚えています。そんな幼かった頃の想い出とリンクしました。本をたくさん読んで偉人達の輝かしい知性の「かけら」を自分の脳に納めたいなと思います。

 

とりとめのない話はまだまだ続く。結局のところ『本を読む人だけが手にするもの』の核心に触れたかは解りかねるところだ。しかし本書を読んだ3人だからこそ楽しい場が生まれた。それは本文の「書籍を自分と相手を位置づける道具として使う」という行為そのものだった。本が年齢も職業も違う初対面の川上さんと桑田さんの心中を忖度するのに必要な道具になっていたことには間違いない。

本を読もう。本を読んで泣いたり笑ったりして楽しもう。

そして、刺激的な知的好奇心をくすぐる本と出合ったらたくさんの人に薦めよう。

本を読む人だけが手にするもの、それは良書を後世に語り継ぐバトンだと私は思う。

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